いわば『Pokémon Sleep』は、ゲームのおもしろさを日常生活に活かし、健康増進やポケモンというIPの強化にもつながりうる作品なのである。単なるゲームの枠を越えようとする試みの1つといえるだろう。
とはいえ、『Pokémon Sleep』に懸念点がないわけではない。本作は発表から4年も経ってしまったこともあり、睡眠測定アプリとしては出遅れた感もある。
現在はApple WatchやFitbitといったスマートウォッチで睡眠トラッキングを行うことができる。スマートウォッチの場合は睡眠中の心拍数・呼吸数の記録もできるうえ、睡眠時にこれといった操作をしなくてもよい。すでに使っているという人からすれば『Pokémon Sleep』に乗り換える理由は、「ゲームとして遊びたいから」くらいのものだろう。なお、今のところスマートウォッチのヘルスケア機能との連携はないようだ。
また、『Pokémon Sleep』は睡眠時の制約が大きい。必ず枕元に置く必要があり、サイドテーブルのような硬い場所に置くと睡眠が測定できないのである。
睡眠時、枕元にスマートフォンを置くのはあまりよろしくないことだろう。気になってつい見てしまえば眠りが阻害されるし、かつ充電する必要もあるので場合によっては環境を見直さなければならない。
前述のPokémon GO Plus +を購入すればこの問題は解決するものの、価格は6578円(税込み)とそれなりである。『Pokémon GO』でも利用できることにメリットを感じる人にはおすすめできるかもしれない。
なお『Pokémon Sleep』に関して、株式会社ポケモンに32%出資する任天堂は自社のQOL事業とは無関係であると2019年の株主総会で答えている。2015年に亡くなった任天堂の元社長である岩田聡氏は、2014年1月に「任天堂の娯楽を再定義する」というコンセプトのもと「QOL(Quality of Life)事業」を発表していた。ただ、その後にこれといった商品は展開されていない。
ともあれ、『Pokémon Sleep』は非常に意欲を感じられるゲームである。睡眠を楽しくできればそれこそ皆が幸せになるだろう。発表から4年経ってのリリースとなったが、その出遅れをポケモン人気とゲームとしてのおもしろさで取り戻せるのか、注目の作品である。