「パワハラに遭いやすい」40代男性に見られる特徴

パワハラ
若手よりも40代男性のほうがパワハラ被害者になりやすいといいます(写真:Mai/PIXTA)
世の中の目が厳しくなり、改正労働施策総合推進法(通称「パワハラ防止法」)が施行されたとはいえ、いまだパワハラに苦しむ人がいます。そして、その被害者の多くは実は40代男性ということをご存じでしょうか。もしそのような立場になってしまったら、どうしたらいいのか。900人超にインタビューを行い、働く人たちの思いを聞き出してきた健康社会学者の河合薫氏が、鋭く、そして温かく40代のキャリアを考察、指南します。
河合氏の新刊『40歳で何者にもなれなかったぼくらはどう生きるか』(ワニブックスPLUS新書)より一部抜粋・編集のうえ、お届けします。
 

パワハラ被害者は「40代男性」が圧倒的に多い

<全ての社員が家に帰れば自慢の娘であり、息子であり、尊敬されるべきお父さんであり、お母さんだ。そんな人たちを職場のハラスメントなんかでうつに至らしめたり苦しめたりしていいわけがないだろう。>

これは厚生労働省が設置した「職場のいじめ・嫌がらせ問題に関する円卓会議」のワーキンググループが、2012年1月に公表した報告書の最後に書かれていた言葉です。

まったくもってそのとおりだなぁとつくづく思いますし、「私」たちは労働力を提供しているのであって、「人格」を提供しているわけじゃない。なのに、「人を傷つけずにはいられない人」が一向にあとを絶ちません。

さすがに数年前には企業のあちこちに巣くっていた、

「昔はパワハラなんて、日常茶飯事だったよ」

「そうそう。僕も目の前で上司に原稿破られたりしたよ」

「今だったら完全にパワハラになるんだろうけど、愛があったもんな」

「ある意味ああいう行為って、愛情表現でもあるわけだし」

などと、堂々と「上司のパワハラ」を「愛情だった」と笑いながら話し、懐かしそうに振り返る輩は消えました。

しかし、「愛があればなんでも許される」という間違った価値観は、「パワハラと指導の境界線が難しい」という一見すると「部下思い」のような言葉に変わり、そのターゲットにされているのが40代です。

上にも下にも気を遣い、ヘトヘトになっている体育会系最後の世代の40代男性の多くが、「自分は相手より上」と信じて疑わない輩の被害にあっているのです。

日本労働組合総連合会(連合)が実施した調査で、パワハラ被害者は圧倒的に40代男性が多く(42.4%)、次いで30代女性と50代女性(35.2%)だったことがわかりました(「仕事の世界におけるハラスメントに関する実態調査2021」より)。上司・部下という構図から「パワハラ被害者=若手社員」をイメージしがちですが、実際には40代のベテラン社員が主たる被害者です。

パワハラの内容については、4割以上が「脅迫・名誉毀損・侮辱・ひどい暴言などの精神的な攻撃」で、パワハラの行為者は、「上司」が77.5%と圧倒的に多く、「先輩」33.3%、「同僚」23.6%、「後輩」7.2%と続いています。

ハラスメント
(出所:『40歳で何者にもなれなかったぼくらはどう生きるか』)

おそらく若い社員には「パワハラになるかも」と躊躇しても、40代なら「これくらい言ってもいいだろう」と思っている上司が多いのでしょう。実際、私の周りの「パワハラに遭った知人」もすべて40代。職場で、みんなの前で、日常的に上司に暴言を吐かれ、孤軍奮闘を余儀なくされていました。

パワハラから逃げる勇気を

【証言 大手銀行勤務のユウキさん(仮名)40代後半】

「まるで見せしめでした。部下たちがいる前で、毎朝怒鳴られる。最初のうちは、自分をスケープゴートにして、若い社員たちに活を入れているんだろうと思ったので、頭には来るけど、さほど深刻に考えませんでした。ところが、だんだんとエスカレートしていった。人間って、一度でも『バカ』とか相手を冒涜する言葉を使うとたががはずれるんです。『飛ばすぞ!』とまで言われましたから。