それだけにユーザーは、期待ハズレな印象を抱いているはずだ。API有料化をめぐっても、高額な利用料を払えないサードパーティー(公式ではない第三者)によるサービスが、続々と閉鎖に追い込まれた。採算が取れずツイッターそのものが終了してしまうと本末転倒なのだが、「『俺たちのイーロン』が、ツイッター文化を守ってくれる」と持ち上げていた向きには、失望を与えているだろう。
では今回の「閲覧制限」騒動によって、どのような変化が今後、起こると考えられるだろう。
ツイッターに今後起こること1「運営不信の加速」
まずは「運営不信の加速」だ。サービス維持のためには、収益力アップは欠かせない。それはユーザーも気付いているはずだが、とくに日本では「情報はタダで得るもの」といった認識が根強い。そんななかで、強行突破してしまうと、拝金主義的な印象を残しかねない。
課金ユーザーへのフォローアップも大切だ。マスク体制になって以降、月額980~1380円の「Twitter Blue」が日本にも導入され、これまで無料かつ審査制だった「認証済みアカウント」がBlue利用者へのサービスとなった。
しかし、認証済みアカウントもまた、今回の騒動では、閲覧上限が定められている。無料ユーザーより優遇されていても、告知なく制限がかけられるとなれば、「課金する意味は?」と疑問視されてもムリはないだろう。
ツイッターに今後起こること2「広告主離れ」
もうひとつ予想されるのは、「広告主離れ」だ。かねてマスク氏就任以降、クライアントが離れていると報じられているが、急な方針転換による仕様変更と、それにともなうユーザーの不信によって、さらに広告出稿を足踏みするケースも増えるのではないか。
たとえば「プロモーションしたい時に、十分な効果を発揮できないおそれがある」といった不安は、今回の騒動で露呈している。閲覧制限中の7月2日夕方、人気アニメ「機動戦士ガンダム 水星の魔女 Season2」(MBS・TBS系列)の最終回が放送された。フィナーレを目前に、ツイッターではその数日前から、番組関連のハッシュタグを投稿すると、あわせてキャラクターの絵文字が自動表示される、期間限定の施策が行われていた。
絵文字表示の取り組みは、直近でも「鬼滅の刃」や「【推しの子】」といった作品で行われている。ただ「水星の魔女」はツイッターとの親和性が高く、前シーズンから、毎話放送ごとにトレンド入りしてきた。こうした経緯もあって、最終回放送日にタイムラインの話題を一気に集めるべく、計画的に準備が行われていたと察する。それだけに、水を差すような「一時的な措置」に、関係者は肝を冷やしただろう。
不安定な利用環境が続くなか、ツイッターからの「移住先」を探す動きも見られる。
数年前にも注目されたMastodon(マストドン)や、日本発のMisskey(ミスキー)、ツイッター社の元CEOが関わる招待制のBluesky(ブルースカイ)、あらゆるSNSから「出入禁止」となったアメリカのドナルド・トランプ元大統領が立ち上げたTruth Social(トゥルース・ソーシャル)などが話題になっているが、ここに来て、最有力とされる新サービスがやってきた。FacebookやInstagramを展開するMeta(メタ)が、7月6日にも始めると報じられている「Threads(スレッズ)」だ。
GAFA(FはMetaの旧社名Facebook)の一角を占める、世界有数のIT企業によるSNSサービスの誕生とあって、期待は大きい。しかし、筆者の見立てでは、完全なるツイッター代替には(少なくとも日本市場においては)なり得ないと考えている。