まだ研究途上ではありますが、脳には「問いを投げかけておくと、答えを自動的に収集・生成してくれる」という能力があります。近頃はChatGPTなどAIが答えるチャットサービスも話題ですが、本来、そのはるか上を行くのが私たちの脳なのです。
なんといっても、脳には大きな強みがあります。それは、各人それぞれの記憶や嗜好をすでに熟知してくれている点です。
当たり前の話ですが、自分自身に「欲しい答えの条件」をこと細かに説明する必要などありません。ですから使い方さえ間違えなければ、これほど優秀な相棒はいないのです。
そこで紹介したいのが、私が開発したA4・1枚の「4分割シート」。
このシートを使えば、通常稼働をしていない脳の部位にまで刺激を与え、フル回転をさせることができます。
そんな状態を私は「脳に任せる」と呼んでいます。まず、このシートの作り方を説明しておきましょう。
A4サイズの紙を縦半分、横半分に折り(順不同)、全体に大きな十字の折り目を付けます。
ここでは左上を第1象限、右上を第2象限、左下を第3象限、右下を第4象限とします。第1から順に、第4の象限までZ字を書くような順で記入していきます(※通常、数学のグラフなどでは、右上が第1象限、左上が第2象限)。
第1象限(左上)=問い(欲しいアイデア、考えるべきテーマ)
第2象限(右上)=そのアイデアを成立させるための条件(狙いや、予算、期日など)
第3象限(左下)=過去の事例や、類似の例(既成のものの分解図などでもよい)
第4象限(右下)=ひらめいたこと、気付き(ひらめくまで空白にする)
SCAMPER法などの発想術で行き詰まってしまった人は、脳に任せる発想法をおすすめします。
脳は「質のよい貯蔵庫」のようなものです。
「問い」をいったん投げかけておくとひとりでに「熟成」をして、思いもよらぬ角度から高精度の答えを提示してくれます。
もちろん、問いを投げかける前にいったん考え抜く作業は必要です。しかし「何もしない状態」は、それ以上に大事なのです。
名著『思考の整理学』で著者の外山滋比古氏は、この「何もしない状態」を「発酵」という言葉で形容しています。
手に入れた情報は、すぐに利用するのではなく、しばらく寝かせておく、つまり発酵させることで新たな価値を生み出せると説いています。
これと類似のことは過去の賢者たちも唱えてきました。よいアイデアを生み出すためには「一生懸命考える」という過程は必要ですが、脳に負荷をかけて必死に考えたあとはしばらく放っておく。
そうすることで、脳内である種の化学反応が起こり、新たなアイデアが生まれるわけです。
実際、私もこの脳の性質を活用して、多くのアイデアを創出してきました。この「熟成」「発酵」のメカニズムを教育心理学の用語で「レミニセンス現象」と言います。たとえば次のような現象を指します。