つまり、事実のみを伝えると「だから何なんだ?」と意見が求められ、意見のみを伝えると「大元の事実は何なんだ」と事実が求められることになります。したがって、事実と意見どちらか一方のみでよいということではなく、両方を揃えて、伝えるということを意識していくようにしましょう。
A 「昨日のセミナー、アンケートの満足度は4.8点だった」
B 「昨日のセミナーは、好評だった」
「昨日のセミナー、アンケートの満足度は4.8点でした」、これは「4.8点」という事実が語られていることになります。4.8点という事実は、どういう意味合いで捉えればよいのか、意見が必要です。好評だったと解釈してよいのか、いつもとあまり変わらないのかについて言及する必要があります。
「昨日のセミナーは、好評だった」、これは「好評」という解釈が入っているので、意見になります。すると、考えなければならないことは、何をもって好評と言っているのか。例えば、5点満点の満足度アンケートの結果が平均で4.8点であったといったことが考えられます。
事実と意見を揃えて伝えると「昨日のセミナー、満足度アンケートの参加者平均4.8点と好評でした」となります。
最後に、人はなぜ異なる意見を持つのかということを考えておきましょう。事実と意見という視点から整理すると、意見は「事実」が起点になることがわかります。そうなると、考えられるケースは、次の3つになります。
そもそも、保有している事実が違うという可能性があります。一方で、それぞれが持っている情報が違うことは逆に当たり前です。意見交換を始める前に、お互いの持っている情報は同じであるのかをきちんと押さえるようにしましょう。
仮に、持っている情報自体が同じだとしても、どこに着目して情報を捉えるかはやはり人によって異なります。自分に有利な情報に敏感になり、逆に不利な情報は避ける傾向があります。情報量が揃っているだけでなく、お互いが等しく情報を見られているかという点にも留意しましょう。
最後に、持っている情報も見ている情報も同じだとしても、同じ意見を持つかはわかりません。なぜなら、意見を導き出す前提が人によって異なるからです。一般的に、組織は機能に特化して作られます。そうすると組織が違えば、優先される判断軸は異なってくることが普通です。また、個人として、何を判断軸として優先するかは当然異なってきます。
したがって、むしろ意見は違うことが自然と考えて、その違いはどこに起因しているのかを理解するようにしましょう。
あなたの立場なら、私も同じ意見を持つかもしれないという状況になって、初めてお互いが理解し合えたり、議論の前提が揃ったと言えます。違う風景のまま議論をするのは、不毛なもの。同じ土俵に乗ったうえで意見交換ができるようにしていきましょう。