かつて日本が高度成長期だった頃は、会社で努力すれば出世ができました。思うように成果が出せなくてもクビになる心配はなく、定年までの生活は保証され、給料も年齢とともに確実に上がっていました。
当時は世の中全体に安心感がありました。とくに意識しなくても「みんなと同じ」という感覚があったのです。
面白いことに、みんなが同じように幸せだった一億総中流の時代には、「みんなと同じままじゃ嫌だ」「自分はもっと幸せになる」と上昇志向を持つ人がたくさんいました。「同僚との出世競争に勝ちたい」「隣の家よりもいい暮らしをしたい」といった夢や目標の実現に向けて努力していたのです。
経済が低迷してくると、「不幸でもみんなと同じなら満足だ」と思う人が増えてきます。本来は、低迷しているからこそ夢や目標を持たなければならないと思うのですが……。
今後、日本の格差社会が進行すれば、1人の富裕層と99人の貧困層が世の中に誕生します。つまり、「みんなと同じ」イコール「99人の貧困層」ということになります。
みんなと同じで満足していたら、給料はどんどん下がり続けて、過酷な労働環境に置かれるのは確実です。貯金もできなくなりますから、将来の不安はかえって増大するだけです。
みんなと同じは、不幸な結果を招くと考えるべきです。
ちなみに、いじめの根本にも、仲間はずれにされることへの不安があります。いじめグループのメンバーの側も仲間はずれを恐れ、いじめられる側も逃げ場がないため、いじめが続いてしまうわけです。やはり、「みんなと同じ」は不幸になりやすいのです。
「素敵な異性と出会えない。どうせ自分には魅力がない」
そう悩んでいる若い人に対して、私は冗談まじりに次のように言うことがあります。
「カッコいい映画俳優だって、周りに女性がいない環境に生きていたらモテないかもしれないですよ」
実際、私が知る限り、美しい女性と知り合いになれていちばんモテている職業は、モデル事務所のマネージャーです。
それもそのはず。マネージャーは、1人で20人や30人ものモデルをマネジメントし、せっせと撮影現場に送り迎えしたり、仕事のアドバイスをしたりしているのです。その中の1人や2人がそのマネージャーを好きになっても、けっして不思議ではありません。
つまり、すべての物事には対策やテクニックがあります。「異性の多い環境に身を置く」というのは、モテるための1つのテクニックです。
ビジネスでも受験でも、対策やテクニックを身につけていれば、ほとんどのことはうまくいくのです。
大部分の不安は無知から生まれます。きちんとした知識や情報があれば持たなくてもいいような不安に、多くの人が悩まされているのです。
ほとんどの人は「そんな対策があるなんて知らなかった」「誰からも教えてもらえなかった」と口にします。
でも、本当に必要な情報というのは、受け身の姿勢では得られません。
どうして自分から進んで、対策やテクニックを見つけ出そうとしないのでしょうか。不安で困っているなら、一生懸命打開策を探してもいいはずです。でも、実際には何もしていない人が大半です。
その最大の理由が「あきらめている」ことです。「どうせ自分はダメなんだ」「うまくいかないに決まっている」というあきらめがあるので「不安だけどこのまま生きていくしかない」と思い込んでいます。
不安に思うなら対策を考えればいい。その基本を忘れてしまうのは、不安に振り回されているから。そういう人に、必要な知識や情報を誰かが届けてくれることはないのです。