あなたは、これから出張です。2時間半ほど新幹線に乗る必要があります。混んでいる場合は、出入りがしやすいように通路側の席を、すいている場合は、景色を楽しむために窓際の席をとろうとみどりの窓口に向かいました。
さて、通路側の席にするか、窓際の席にするか、その判断をするために、あなたはどのように窓口の職員の方に問いかけますか? これは、実際に私自身が置かれていた状況で、当時とっさに思いついたのが次の問いかけでした。
「次の16時発、新大阪行きの新幹線、すいていますか?」
もし、すいていますと答えが返ってきたら、「窓側で」、混んでいますと答えが返ってきたら、「通路側で」とお願いしようと考えていました。
窓口の職員の方は、満面の笑みで、「はい、まだ十分、空いていますよ。あと300席あります!」と答えてくれました。残念ながら、300席空いているという状況から、私は通路側、もしくは窓側のどちらにすればよいのか判断することができませんでした。
このエピソードからお伝えしたいことは、「コミュニケーションの結果は受け手が決める」ということです。話し手が伝えたかったこと、聞きたかったことはもちろんある訳ですが、どう伝わったかがすべてということです。
何かを説明し、相手からの反応を聞いて、「そんなつもりはなかった」「そんな意図はなかった」と想定と違った結果になることもよくあります。ただ、そんなつもりはなかったとしても、「そんなつもり」に伝わってしまったのであれば、その結果がすべてです。
なぜならば、そう相手が受け止めてしまったからです。もしくは一生懸命説明をしても、それでも相手からよくわからなかったと言われてしまうこともあるでしょう。
こんなとき、得てして、伝わらない理由を「相手の理解力がないからだ」と相手に求めてしまいがちです。実際にその話を理解するための前提の知識を相手が持っていなかったということもあるかもしれません。
それでも、その前提の知識を持っていないかもしれない相手に対して理解してもらえるだけの説明ができなかったというスタンスで振り返るようにしましょう。なぜなら、変えることができるのは、相手ではなく自分の伝える内容だからです。
コミュニケーションの結果は受け手が決めるということになると、悩ましい状況が生じてしまいます。それは、伝える相手ごとに受け止め方が変わるということです。同じことを伝えたとしても、同じ結果が得られない可能性があるということです。つまり、正解が1つに決まらないということにもなりますし、逆に正解がないとも言えます。
この正解がないという状況にどう向き合うかがコミュニケーションの上達を分けることになります。1つは、正解がないのであれば、あれこれ考えることをやめよう……と考えてしまうこと。