先生:では、相手視点、上司は何を考えていると思いますか?
Cさん:んー何も考えていないというか、昔ながらの方法しかわからないんでしょうね。それに従わない私が気に入らないんだと思います。
先生:あなたを気に入らない、そんな素振りですか。
Cさん:いやぁ、むしろ上司はやたら私にかまいたがるんです。……気に入らないのは、私のほうですね。
先生:視点が広がっていますね。この調子でほかの角度からも考えてみましょう。
このように、改めて特定の視点から見直してみると、今までとは違う見方に気づくことがあります。
では7つのうち、そのほかの視点からも見てみましょう。
まずは③第三者視点。第三者は誰でもよいですが、例えば同僚の視点。ほかの人たちはどう指導されているでしょうか。同じような態度を取られているのか、もっと厳しいのか、もしくは放置されているのか……それによって上司の本質も見えてきます。
④時間視点では過去と未来を想像してみます。例えば、このまま1カ月、1年、3年経ったらどうなっているでしょう? 1年経てば上司か自分が異動するだろう、自分はそれまで耐えられるのか、それによって今の行動も変わるはずです。
⑤宇宙視点。これは妄想でかまいません。会社の上空にドローンで飛び出し、街の上のほうから眺めてみます。人々が「ありんこ」のように見えます。必要とあれば宇宙まで上っても。すると自分の悩みなんて、とても小さなことのように感じるでしょう。
⑥感謝視点。今回の一連の出来事の中で、どこか感謝できる点はないか考えてみましょう。「まったく異なる価値観を知ることができた」「友人の上司よりはマシだ」など、何でもかまいません。
最後に⑦ユーモア視点。例えば上司が言うことを、『半沢直樹』のどれかのキャラクターに当てはめてみたら少し笑えませんか?
こうしてさまざまな視点で見ると「人生史上、ものすごく悲惨なこと」を、少しずつ「大したことないこと」に変えられるのです。
繰り返しますが、これはあくまで1段階用の対処法。2段階でやると、逆に相手に腹が立ってくることも多いので注意です。
Iさん:会社を辞めたいんですが、辞めた後のことが不安で。残業も多くて上司も嫌でもう限界なのに、どうしても辞める勇気がなくて……。
先生:辞めるとしたとき、Iさんの一番の不安は?
Iさん:次の就職先がないことです。新卒で入社してまだ2年なんです。内定が出たのも今の会社だけで。経理の仕事をしていますが、経験が浅い私を雇ってくれる会社なんてないです。
先生:そうですか、経理の専門知識を持っているなら転職先は見つかりそうな気もしますが。
Iさん:知らないこともいっぱいで仕事も遅いし、ミスも多くて、向いていない気がします。実は、経理も希望ではなく配属されただけで。
先生:経理ではミスも多いし、上司も苦手。退職も怖い。ほかの部署への異動希望を出してみるのは、どうでしょう?
Iさん:無理です! 与えられた経理という場所でも役立たずなのに、ほかでうまくいくわけがない。会社に迷惑をかけるくらいなら辞めたほうがいいんです。でも辞めるのも不安で……。
疲労がたまって2段階、3段階と落ちてしまうと、極端な選択肢しか浮かばなくなります。Iさんも最初から社内異動の案はなく、「会社を辞めるか、辞めないか」で悩んでいるようです。
こんなときは、0(会社を辞めない)か10(会社を辞める)ではなく「7~3バランス」で考えるといいでしょう。
「会社を辞めない」から「会社を辞める」までの間を10で区切ってみます。例えば3のところには「他部署の同期に話を聞く」、5には「他部署異動を希望する」、7には「転職サイトに登録する」といったふうに各段階の行動を考えてみます。
転職サイトに登録したところで、それほどデメリットはありませんし、エネルギーもあまり消費しません。その辺りを狙うのがポイントです。すると「意外と自分にもオファーがある」「自分はこの仕事がしたいのかも」など、新しい情報が入ってきます。そうして、辞める、辞めないといった0か10以外の選択肢が考えられるようになるのです。
0か10で「ただ悩んでいる状態」から、とにかく行動することで、前に進んでいる感覚も持つことができます。