吉本が「子ども育成」に積極投資する深い意味

そんなにぎわいを見せたイベント会場が、夜は花火会場へと一変。ステージでのDJパフォーマンス、ミルクボーイら芸人のトークに続いて、約1万発の花火が音楽とともに盛大に打ち上げられ、家族で存分に楽しんだ1日のラストを締め括った。

吉本の次なるトライ

子どもへの福祉、教育を目的とした事業としては、吉本興業はこれまでにも無料で食事を提供する子ども食堂「あそぶガッコ食堂」を沖縄で運営してきているほか、大阪では市の子ども食堂に芸人が出向き、たこ焼きを振る舞って一緒に遊ぶ活動などを行ってきた。

それらを含め、これまでに単発的に実施してきた子ども向けのエンタメレッスンやスクールなどのイベント、福祉・教育にまつわる活動をその場だけで終わらせず、継続的に発展させようとするのが「よしもと放課後クラブ」だ。ソーシャルビジネスによる地方創生など社会貢献事業に幅広く取り組んできた吉本興業の次なるトライになる。

また今回開催された『よしもと放課後クラブ in 万博記念公園』は、2025年の大阪・関西万博で吉本興業が出展するパビリオンともテーマがリンクする。吉本興業にとっては、本イベントは2025年に向けたパイロット的な位置付けでもあるのだろう。

この日の会場内では、多くの親子と芸人たちが、漫才、吉本新喜劇、K-POPといった体験教室のほか、各エリアのさまざまなプログラムを通してふれあい、さらに「オンライン社会科見学」では国境を超えてアジアの国とも時間と場所を共有。子どもたちにとって、楽しみながら新たな体験や学びを得る場になった。

課題もある

昨年10月に大阪で開校し、この5月より東京校と沖縄校をオープン。まだスタートしたばかりの「よしもと放課後クラブ」だが、これから向き合っていく課題もある。

それは、持続可能なビジネスとして継続するために、どう運営していくかということだ。

同校を運営する、よしもとアカデミーの代表取締役社長・上田泰三氏は、「吉本興業のすべてのクリエイティブを子どもの育成に役立てるためにフォーマット化していく」と力を込める。具体的にどう落とし込むかはこれからになるが、その指針を次のように語る。

「サービスを受け取る子どもたちが手に取りやすく、費用もそれほどかからないようにしながら、価値の高い体験ができるようにする。そのために、イベントや映像コンテンツなどこれまでにやってきたものを整理統合して、体系化を進めていかないといけない」(上田氏)

子どもたちにとって、憧れの存在に会うことができて、直接教えを受けることは大きな意味がある。その経験が、プロの道を目指すきっかけになることも多く、知らず知らずのうちに彼らの未来をリードする。そこでエンタメに接した子どもたちの創造性の喚起や育成は、日本のエンターテインメント産業の未来につながる。

エンタメ業界では、吉本興業が積極的にこうした活動を行っているが、これはあらゆる業界における人材育成の根本に当たることだろう。子どもたちがその仕事の第一人者と触れ合うことで感じて考えること、影響を受けることは多くあり、そこから得るものは大きいからだ。

そして、それは今多くの企業が取り組む地球環境保護と同列の社会的責務になるのではないだろうか。子どもたちの未来のためになにができるのか。それぞれの企業や業界が得意分野から手を差し伸べるスタンスが、これからスタンダードになっていくのかもしれない。