「あった方がいい病」が組織の生産性を低下させる

「あった方がいい」を英語では「nice-to-have」と言います。これに対して「必要不可欠」は「must-have」です。私たちは、アメリカ親会社のグローバルCEOからつねに、「nice-to-haveではなくmust-haveで仕事をしろ」と言われてきました。nice-to-haveを基準にするといくら時間があっても足りないうえに、ノイズが増えて本当に大切なものを見失ってしまうからです。

会議への出席者の人選は、ポジションが高くなっていくとよりシビアになります。ある外資系企業の月例戦略会議で、毎回、ほとんど発言をしない部長が、アメリカ人社長の「No contribution(貢献していない)」のひと言で会議メンバーから外されたうえ、降格させられたという話を友人から聞きました。

部門の代表として会議に貢献できないのであれば、身の丈に応じた仕事をやれということです。もちろんそこに「いた方がいいから」などという発想はみじんもありません。

「あった方がいい」は本当に必要か

日本のビジネスシーンでよく見られる、下記のような「あった方がいい」は本当に必要でしょうか。

〇参考になるかもしれないので会議に参加させておいた方がいい。
〇勉強になるかもしれないので彼も同席させておいた方がいい。
〇不満が出ないように全員の意見を聞いておいた方がいい。
〇万一のときのために、この資料も用意しておいた方がいい。
〇メールを打ったが、念のために電話で確認しておいた方がいい。
〇この機能は便利だから付けておいた方がいい。

上司は部下の時間を預かっています。そこで、もしかしたら自分が、「あった方がいい」で部下の時間を奪ってはいないだろうかと、時々自問してみることが必要です。そのような視点で仕事を見ていくと時間の価値に対する感覚が研ぎ澄まされ、仕事の密度が高まっていきます。