2つめの「大差」は、「成果を出せるスキル」があるかどうかです。
スタートアップ企業は、基本的に即戦力人材を採用し、入社後3~6カ月以内に成果を出すことを求めます。
そのため、会社(環境)が変わっても「再現性」があり、「目に見える成果」をコミットできるスキルを持つ人は、スタートアップで活躍できます。
反対に、そうしたスキルのない人、たとえば「あなたのスキルは何ですか?」と聞かれたときに、これまでの経験をただ並べる人は、スタートアップで活躍できない人となってしまいます。
スキルを尋ねたときに、「新人研修で外為事務を学んだことがあります」などと言う人がいます。
「では、あなたは外為事務でどのような成果を出せますか?」と聞かれ、答えられなければ、それは「成果を出せるスキル」とは言えないのです。
3つめの「大差」がつくポイントは、「仕事は何をしているの?」と聞かれたときにわかります。
スタートアップで活躍できる人は、「マーケティングの仕事をしています」「脳外科医です」などと業務内容を答えます。
プロフェッショナルとしての自分の市場価値、すなわち「値札」を言えるのです。「名札から値札へ」とは、経営コンサルタントの大前研一さんの言葉です。
いっぽう、仕事を尋ねられたときに、「〇〇銀行に勤めています」「〇〇病院に勤務しています」「〇〇市の公務員です」などと社名・組織名を答える人は、往々にして、スタートアップでは活躍できない人になります。
さらには、「僕、〇〇大卒なので採ってください」などと言う30代などもいますが、「あなたは大学卒業から30代になるまで、何をしていたの?」という話になってしまいます。
しかし新卒採用の弊害か、いつまでも学歴という「名札」で転職できると思っている人は、案外多いものなのです。
スタートアップで「活躍できる人」と「ダメな人」の4つめの大差は、「アンラーン」ができるかどうかです。
スタートアップ転職で活躍できる人は、みな「アンラーン(unlearn)」ができます。アンラーンとは「思考のクセを意識的に忘れる」という意味です。
とはいっても、これまで培ってきたものをすべて捨て去るということではありません。習得したスキルや経験は貴重な資産です。
「アンラーン」とは、それを「負の遺産」に変えないようにメンテナンスするということなのです。私は「学びほぐし」と呼ぶこともあります。
アンラーンができる人は、何歳になってもスタートアップ転職ができます。
逆に言うと、スタートアップでうまく活躍できない人は、アンラーンができません。「前の会社での経験をリセットして捨てる力」がなく、「こういうときはこうすると決まっている」などの前例主義にとらわれ、自分の成功体験をほかの人たちに押し付けるだけの人になりがちなのです。
こうした「思考のクセ」を捨てきれない人、「マウンティングおじさん&マウンティングおばさん」は、中高年世代に結構多い印象です。
スタートアップは実力第一主義で、ラクな仕事ではありません。
はじめから高い報酬が約束されるわけでもありません。経営環境から仕事内容に至るまで、日々すごいスピードで目まぐるしく変化していきますし、倒産の危険にもさらされます。
しかし、実績を上げれば、お金や役職は、あとからついてきます。
成功すれば「高い給与」が与えられ、才能があれば「高い役職」を与えられる。これがスタートアップの基本原則です。
スタートアップで活躍できる人になれるかどうかは、考え方や行動によって、変えていくことができるものばかりなのです。
これから「スタートアップに身を投じてみたい」と思う人が、ひとりでも多く生まれ、活躍し、日本社会を変えていくことを、『スタートアップ「転職?副業」術』を上梓した著者として、強く願っています。