日本のアニメ映画『THE FIRST SLAM DUNK』(スラムダンク)が中国で4月20日に公開され、興行収入記録を次々に塗り替えている。3月に公開された『すずめの戸締まり』も大ヒット中だ。
日本アニメは中国人の固定ファンが多く、一定のヒットが期待できるが、両作品はレビューサイトでの口コミの多さや先行上映会のSNS拡散がスタートダッシュに貢献した。
近年は『万引き家族』『花束みたいな恋をした』など実写版のヒットも出ており、2023年前半は過去最高のペースで日本映画の公開が計画されている。
映画データを提供する灯塔専業版によると、スラムダンクの劇場版『THE FIRST SLAM DUNK』の興行収入は24日までの4日間で4億元(約78億円)を超えた。
前売り券の販売が約1億1560万元(約22億5000万円)を突破し、中国で上映された海外アニメ映画の前売り最高額を更新するなど、社会現象になっている。
3月24日に中国で公開された『すずめの戸締まり』も中国で興行収入が7億7000万元(約150億円)を突破し、日本のアニメ映画の興業収入として過去最高だった『君の名は。』(5億7600万元:約112億円)を抜き、記録を更新中だ。
現地報道によると、スラムダンクの公開後、中国で1日に公開される上映数の7割をこの2作品が占めている。
中国は4月29日からメーデーの5連休に入る。米国アニメの人気シリーズの公開がないこともあり、両作品がさらに数字を伸ばすことが期待される。
日本作品2つの大ヒットは、中国映画市場で「Z世代 vs 中年男性」の戦いとしても注目されている。スラムダンクの主人公たちが所属する「湘北高校」になぞらえて、「湘北の場外戦」と比喩するメディアもある。
下馬評がより高かったのは『すずめの戸締まり』だった。中国で映画観客の主力は10代後半から20代のZ世代で、同作品のコアターゲットと一致する。中国で2016年に公開された『君の名は。』は日本アニメ最大のヒットとなり、次作『天気の子』もヒットし、新海誠監督のブランドも確立されている。震災をテーマにした『すずめの戸締り』は、コロナ禍の喪失感が漂う中国人も共感しやすい。
1990年代から2000年代前半にかけて中国のバスケブームを彩った『スラムダンク』もヒットは確実視されていたものの、日本で1990年に始まった漫画、1993年開始のアニメはいずれも1996年で終わっており、ターゲットは「青春回帰したい」30~40代が中心と予想されていた。
作品として人気が高くても、仕事や子育てで忙しいこの世代が、実際にどれくらい映画館に足を運んでくれるかは未知数な部分があった。
だが、4月15日に行われた先行上映会が、『スラムダンク』の“追い上げ”に火をつけた。
実は『すずめの戸締り』も『スラムダンク』も、全国公開に先立つ先行上映会を中国を代表する名門大学である北京大で実施した。欧米の著名起業家や政治家が訪中した際には、北京大、清華大でスピーチを行うのが慣例となっているが、最近は映画の話題作りでも活用されており、中国の映画産業がどういう層を「影響力を持つ人」と見なしているかがわかる。
『すずめの戸締り』の先行上映会は、大人数を収容できる百周年記念講堂で行われ、新海監督も来場して約2000人のファンと交流した。
一方『スラムダンク』の先行上映会は北京大の体育館に巨大スクリーンを設置し、映画の試合会場を再現する“没入型”スタイルで実施された。