「30歳を過ぎた転職」で直面する思いがけない壁

あとで聞いてみると、

上司:「君からはメールを送った、としか言われてないよ」
部下:「Aさんに依頼された資料なんですが」
上司:「その資料が、何なの?」
部下:「昨日までが締め切りと言われたので作成し、昨日メールで課長にお送りしました」
上司:「そんなこと、知らないよ。どうしてそんな大事なこと言わないの? 俺はA君から何も聞いてないんだからさ」
部下:「あ、申し訳ございません」
上司:「前の会社でもそうやってたわけ? わかってないな~」
 

こう言われてしまうのだ。正直なところ、

「そこまで言わなければいけないのか?」「なぜ話が通じない?」と戸惑うだろう。しかし、ついつい省略する話しグセがついてしまっているのが原因なのだ。

実力はあるのだから、キチンと仕事をすれば、転職先でも必ず貢献できる。にもかかわらず、なぜか転職先では関係がギクシャクしてしまう。

以前の職場ではリーダー的存在だったりすると、そのギャップに心が折れそうになるだろう。中には、深刻に悩んで、「自分のコミュニケーション力不足が問題だ」と思い込み、「コミュニケーション力アップ講座」に通う人もいた。

しかし、コミュニケーション力をアップするのはカンタンではない。そんな遠回りをしなくても解消する方法はある。ミスコミュニケーションをなくせばいいのである。ミスコミュニケーションのパターンは限定的だから、そのパターンを覚えて対処すればいいだけなのだ。

問題となる「認識のズレ」をなくすには

問題は「認識のズレ」である。「ズレ」をなくす会話術を覚えていこう。

それでは、3つのポイントを紹介しよう。

1、確認し切る
2、質問し切る
3、話し切る
 

例えば、上司から「なるはやでお願い」と言われたとしよう。

こういう場合、反射的に

「わかりました。なるはやでやります」

と言ってはいけない。

ミスコミュニケーションを防ぐには「確認&質問」が必要だ。どんなに経験があっても、新しい職場では新人である。抽象的な表現をされても、うまく具体化できないのだから、確認し切る、質問し切るのである。

(画像:『キミが信頼されないのは話が「ズレてる」だけなんだ』)

例えば、頭の中に「PERT(パート)図」(作業の時間と流れをわかりやすく表現した図解)を思い浮かべてみる。そして質問を繰り返しながら、作業の種類、それぞれにかかる時間、手順などを「PERT図」をイメージしながら認識のズレを減らしていくのだ。

(画像:『キミが信頼されないのは話が「ズレてる」だけなんだ』)

このように抜け漏れなく確認し切ること、質問し切ることが重要だ。

報告・連絡・相談するときも同じだ。

雑な話し方をせず、丁寧に話そう。漏れなく、細かく、を意識するのだ。

例えば、仕事の納期に間に合わないようなとき、「ちょっと、このままだと納期に間に合いそうにないんですが……」と言う人がいる。

これだと、間に合わない理由もわからないし、相手にどうしてほしいのかも省略しているので理解されない。

雑な話し方は、相手に考えさせる。だから負荷をかけることになる。

「現状分析をするのに手間取っています。データが想定していた以上に、整理されてなかったからです。情報システム部に手伝っていただき、項目ごとに整理してもらっていますが、納期に間に合いそうにありません」

これだけでも足りない。どうすべきかの判断を相手に委ねてしまうことになるからだ。だから、具体的な提案も添える。これが、最も丁寧な話し方である。

「係長に相談したところ、工程表作成を手伝っていただけることになりました。したがって、1日遅れでは完成する予定です。納期を1日延期させてもらえませんか。翌日の10時には完成させます」

このように、漏れなく、細かく、話し切るのである。ここまで話し切れば、聞き手は考えるヒントをたくさんもらえるため、負荷は最小限に抑えられる。

「わかった。それじゃあ、しょうがない。翌日の夕方の4時まででいいから。それまでに完成させてくれ」と言ってくれるだろう。

少なからず、「何やってんだ! 本当にわかってないな~」なんて言われることはないだろう。

転職したら新人時代を思い出そう

転職先で成功する人は、これまでの経歴をリセットし、初心に戻って頑張れる人だ。どんなに素晴らしい経歴でも、新天地では新人であることを忘れない人である。

だから転職したら新人時代を思い出し、確認し切る、質問し切る、話し切る。このクセを思い出そう。

コミュニケーション力をアップさせるのではなく、ミスコミュニケーションを減らすこと。そうすることで、新しい職場でも早期に信頼関係を構築できるようになるのだから。