AIに負ける物書きと「利用して勝つ人」を分ける差

そうすれば、最終的な出力物を自分の著作物として発表することもできるだろう(ウェブ記事を引用している箇所は、それを明記すれば、著作権上の問題もクリアできるだろう)。

現在は、1つのテーマに関して繰り返しを行える回数は6回までとされているので、あまり推敲はできない。ただし、この回数は、将来、増やされる可能性がある。

Bingが参照の対象としているのは、現在はウェブサイトだが、これを拡張していくことは十分可能だ。専門的な文献を機械学習することが今後行われるだろう。すると、Bingが書ける文章の範囲は、いまよりずっと広がることになる。

日本経済新聞社が主催する文学賞「星新一賞」で、2022年には、AIを利用して作られた作品が114編あった(2023年は、32編)。そして、AIを使って執筆された小説が入選した。

このとき、大きな驚きをもってニュースを見ていたが、対岸の火事だと思っていた。しかし、わずか半年の間に、火はすぐ近くまで迫ってきた。

AIが私の仕事を奪っていくという悪夢が、現実のものとなるかもしれない。

「良い質問」が決定的に重要に

ただし、私は、私の仕事がなくなってしまうとは考えていない。

なぜなら、AIだけで文章を書ける訳ではないからだ。

AIは人間の指示に基づいて文章を書く。そして、出力される文章の出来栄えは、指示が適切か否かによって決まる。

だから、文章を書く能力は、どのようなテーマを見出し、それに関してAIにどれだけ「良い質問」をできるかという能力になる。

つまり、人間が行うべき仕事の内容が変わるのであって、それが不要になるわけではない。

昨年の夏ごろから、AIが絵画を制作し始めた。作品の出来栄えは、人間がいかなる指示を出すかによって変わる。

このため、制作作業の内容は、絵筆をふるうことでなく、AIに適切な指示を出すことになる。絵画を作るために必要とされる能力は、去年の夏ごろから急激に変化しつつあるのだ。

これと同じことが、文章の作成についても起こるだろう。

AIとの会話を通じて、新しいアイデアを得る

人間が行う仕事の内容が変わるだけではない。うまく使えば、これまでより大きな成果を得ることが可能になるかもしれない。

実際、以上で述べたことの応用対象は、文章を書くことだけではない。こうしたプロセスを通じて、新しいアイデアを得ることが考えられる。

そこで、実験を開始した。

手始めに、「読んでない新聞が山のようになって苦労しています。解決策はないでしょうか?」と質問してみた。最初は常識的な答えしか返ってこなかったのだが、何回か対話を繰り返すうちに、「電子クリッピングサービス」という手段があることを教えてくれた。

もっとも、この方法よりは、私がいま行っている方法のほうが効率的なので、実用にはならなかったのだが、いままで知らなかった方法を、比較的簡単に知ることができるとわかった。

ビジネスモデル開発といった問題でも、うまい質問をすることによって、新しいアイデアを引き出すことができるかもしれない。

これからのアイデア創出活動の核心は、AIに向かってどのような質問をするかになっていくだろう。

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