BTS、シティポップ、藤井風が世界で売れる共通点

その後は、2005年に東方神起、2010年には少女時代、そしてKARA(カラ)などSM以外の事務所のグループも続々と日本デビューし、K-POP旋風が巻き起こったことを記憶されている方も多いでしょう。

「日本ファースト」から「欧米ファースト」へのシフト(撮影:尾形文繁)

BTSの成功で韓国が欧米シフトに

日本はアメリカに次いで世界第2位の音楽市場です。それに日韓は文化的にも近いことから、K-POPアイドルの海外進出先として、これまで日本が第一に選ばれてきたのは必然かと思います。それが今では欧米シフトに変わり、日本は世界の市場の一国にすぎなくなりました。とはいえ、海外での売り上げの8割から5割程度に縮小と、それでも日本が約半分のシェアを占めてはいますが……。

こうした欧米シフトのきっかけは、BTSの世界的ブレイクが大きいと思います。

BTSは、2017年にアメリカの「ビルボード・ミュージック・アワード」で、トップ・ソーシャル・アーティスト賞を初受賞しました。しかし、SNSで最も関心を集めたアーティストに贈られる賞であることから、アメリカ国内では「きっとファンの組織票だろう」と少し引いた見方をされていたのです。

ところがその年の「アメリカン・ミュージック・アワード」で「DNA」という楽曲を生披露した際、彼らの圧倒的なパフォーマンスに会場が大熱狂。ステージの様子はテレビ中継やSNSを通じて瞬く間に広がり、大きな話題となりました。

BTSのすごいところは、そこですかさず、英語でどんどん情報発信をしたこと。アメリカでの注目度が高まっているタイミングに、攻勢を仕掛けたのです。

彼らの成功の理由はさまざまな角度から分析されていますが、「英語での発信」に力を入れたことも大きな要因だったと思います。単純なようで、世界中のファンとつながる重要かつ有効な手段ですから。それをタイミングよく駆使したところに意味がある。

でも正直なところ、BTSの成功には複雑な要素がからみ合いすぎて、「これ」と言える理由が何なのか、僕もいまだに正解がわからないのです。彼らの才能や努力はもちろん、いろんな偶然や奇跡が重なり、時代にも恵まれ、今の結果にいたっている。

だから、「今後もK-POPからBTSのようなグローバルスーパースターが出てくるか」というと、ちょっと難しいかもしれませんね。

「日本は韓国エンタメに学ぶべき」か?

一方、日本国内の音楽シーンに目を向けると、欧米での成功という意味では韓国に水を開けられ、K-POPからクリエイティブな部分を学ぼうという論調もあります。でも僕は、その必要性は果たして本当にあるのかと、疑問に思うのです。

たとえば、竹内まりやさんを始め、シティポップはずいぶん前から世界的なトレンドになっていますし、当のK-POPアイドルたちは、最近のJ-POPを好んで聴いています。日本にも優秀なコンテンツや、日本ならではの強みがあるということです。

つまり、学ぶべきは「クリエイティブな部分以外」ではないでしょうか。

K-POPから見習うことがあるとしたら、それは海外に向けた「発信力」だと思います。

そもそも今、シティポップを世界に広めているのは韓国のDJのNight Tempoですし、J-POPをK-POPアイドルがカバーして、日本のアーティストの世界的な人気に火がつくこともあります。せっかく日本は世界にアピールできる資産を持っているのに、これでは他国を介して、情報発信しているようなものです。

必要なのは多言語での情報発信

前回も触れましたが、韓国人には英語を話せる人が多く、国際感覚も進んでいます。海外から帰ってきた人たちが音楽業界に入り、英語など多言語でスピーディに大量の情報を発信する、ということが標準的に行われているのです。