システム開発はなぜこうも「失敗」を繰り返すのか

接触確認アプリ「COCOA」の画面
日本通運は基幹システムの開発断念により、154億円の巨額減損を計上(記者撮影)
すべての事業活動がデジタル化に向かう中、「苦手」や「丸投げ」ではもう済まされない。2月27日発売の『週刊東洋経済』では、「文系管理職のための失敗しないDX」を特集。システムやWeb、アプリの開発において管理職が知っておくべき「地雷ポイント」や、知識ゼロから着手できる「ノーコード」の活用法などを解説する。この記事は本特集内にも収録しています。

計画よりコスト増加、遅延で開発断念

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「しかるべき働きかけやチェックをし切れないまま、ずるずると時間を要してしまった」。

NIPPON EXPRESSホールディングス(以下、NXHD)の赤石衛執行役員は、2月14日に開いた決算説明会で悔しげにそう語った。基幹システムの開発中止とそれに伴う特別損失の計上を受けての発言だ。

NXHDの子会社・日本通運では航空輸送事業におけるグローバル共通基盤の構築を目指し、「新・国際航空貨物基幹システム」の開発を進めていた。だが、当初計画よりも開発コストの増加、開発期間の延長などが見込まれることから、開発を断念。これに関わるソフトウェア仮勘定について、154億円の減損損失を2022年12月期決算に計上した。

遅延が発生した要因については、「開発ベンダーとのコミュニケーションに問題があったのではと社内で分析している。納品前において、成果物の検証をしっかり行うプロセスができていなかったのではないか」(赤石氏)。

今回の事案を踏まえ、2023年1月に新設したITデジタルソリューション本部では今後の大型開発案件について妥当性評価やモニタリングを徹底していくという。

こうしたシステム開発の“失敗”は枚挙にいとまがない。近年の事例を見ても、金融、小売り、メーカー、インフラなど、多種多様な業界の各社がシステム開発に関わる億円単位の損失を出していることがわかる。

開発断念の理由としてよく挙げられるのは、NXHDのケースと同様、開発の遅延だ。開発ベンダーとの間で取り決めた「要件定義」に不備があったり、つくりたいもののレベルに合ったベンダーをそもそも選定できていなかったりすることが背景にある。

出来上がった頃には「時代遅れ」

デジタルの世界は進化が速い。プロジェクトが遅延すればするほど、出来上がった頃にはすでに時代遅れ……という事態に陥りかねない。また、SaaS(クラウド型ソフト)の普及などで、わざわざ自社で膨大なコストをかけずとも実現できる道が開けてしまうこともある。

割り切って方針転換すればいいが、失った時間や費用はもう返ってこない。

触確認アプリ「COCOA(ココア)」でも不具合が多発した(記者撮影)

失敗の典型としてもう1つ挙げられるのが、リリース後の不具合の多発だ。記憶に新しいのは、厚生労働省が開発を主導した新型コロナウイルスの接触確認アプリ「COCOA(ココア)」だ。

感染したことを登録できない、感染者と接触したにもかかわらず通知が届かないなど、開始直後から数々の不具合が発生。どんなサービスであれ、開始後に一定の不具合が発生するのは仕方ない。が、厚労省の調査では事前の動作確認テストが不十分だったこと、省内の専門人材が不足していたことなどの反省点が挙げられている。

国の感染症対策方針の変更に伴い、ココアは昨年11月から順次機能停止しているが、期待された役割を全うしたとは言いがたい。

システムやアプリ・Webの開発におけるこうした失敗が、より裾野の広い中小企業で顕在化してくるのはこれからだろう。