税務調査が入っても確定申告しなかった人の末路

フリーランスも、多くの場合報酬から所得税が源泉徴収されています。たとえば、ぼくが20万円で講演をしたとすると、20万円の10.21%が源泉徴収されるので、2万420円が報酬から引かれます(10%ではないのは、東日本大震災のあと、復興特別所得税が加わったから)。

報酬の20万円には10%の消費税がかかるので、源泉徴収された金額に2万円を足して19万9580円が振り込まれます。取引先にメールで送る請求書は、これらのことがわかるように記載しています。

しかし、源泉徴収されない取引もあります。ぼくの場合だと取材です。どのような取引からどれくらい源泉徴収するかは、そのお仕事の内容によって異なります。

たとえば、ボクサーだったらファイトマネーから5万円を引いた残りに、ホステスだったらその月の報酬から計算期間の日数×5000円を引いた残りに課税されます。

また、個人事業者であるフリーランスには、経費の算入が認められています。みなさんも仕事の道具を買ったり、電車に乗ったり、事務所の家賃を支払ったりしていると思います。

確定申告では、それらの経費を収入から引き、さらに社会保険料控除や配偶者控除などの控除も引いて、所得税を計算します。

経費や控除が多ければ納める所得税が減ります。だからといって、支払いが増えれば、資産は減ってしまう。経費が多過ぎても良くありません。所得税は超過累進税率を用いているので、税率が一定でなく、あなたの所得に応じて5~45%が課税されています。

確定申告をすると、確定申告で計算した所得税と1年間に源泉徴収された所得税に差額が発生するので、納税または還付になります。

現金がなくて住民税を払えないフリーランス

住民税は、前年の所得に対してかかります。だから、社会人になって2年目の給料から徴収される方が多いと思います。

フリーランスの場合は自治体から6月頃に納付書が送られてくるので、銀行の窓口やPay Payなどで支払います。 納付書に記載されたバーコードをPay Payのアプリで読み込むだけで、すぐに納税ができるなんて、すばらしい時代になりました。

このような合理化が、フリーランスの納税を後押しすると信じています。

稀に、過剰な支出によって現金がなく、住民税が払えない方がいます。税金を滞納すると高い利息が発生します。また、そのまま放置すると銀行口座を差し押さえられて、通帳に「サシオサエ」と表示されます。

家に都道府県税事務所の職員さんがやってきて、お金に換えられそうなものを持っていってしまうこともあります。だから、将来の納税額を予想して現金を用意しておきましょう。

ぼくの知り合いの国税職員の方は、コンビニ経営者のところに行って「おにぎり100円セール」の幟(のぼり)を差し押さえたり、SM嬢のところに行って三角木馬を差し押さえたりしたそうです。本来、業務に欠くことができないものは差し押えが禁止されていますが、これらは「欠いても良い」という判断だったのかもしれません。

車のダッシュボードから拳銃を見つけたときは差し押さえなかったと言っていました。そのフリーランスの業務に欠くことができないものだったのかもしれません。

社会保険料は全額自己負担

フリーランスは税金も保険料もすべて自分で納付をしなければいけません。会社員だった頃より、社会保険料の負担を重く感じている方もいるでしょう。

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よくわからないまま給料から天引きされる場合と納付書の金額を見て納付する場合とでは、心理的負担は大きく異なります。だから、保険料はともかく、納税を忌避される方もいます。

ぼくは、前年よりも売り上げや納税額が増えるとうれしく感じます。個人事業者であるぼくにとって、それらは自分が頑張った結果だからです。

今はなくなってしまいましたが、昔は高額納税者の氏名と納税額が公表されていました。他の事業者の指針となるくらい名誉なことだと考えられていたのだと思います。

ぼくの知人の税理士さんが言っていました。

「確定申告はフリーランスの通信簿」

みなさんの納税額が増えることを願っています。