18年続いたGYAO!が2023年3月末をもって終焉を迎える一方で、スポーツ特化のDAZN(ダゾーン)は現在の月額料金より700円アップの3700円に値上げし、攻勢をかけます。悲報続きの動画配信サービスの中でいま何が起こっているのでしょうか。明暗が分かれた2つのサービスから必死の業界構造が見えてきます。
インターネットに繋がったパソコンから見るしか手段がなかった動画配信サービス黎明期に始まったGYAO!終了の告知は、1つの時代が終わったようなそんな物悲しささえあります。GYAO!と言えば、地上波テレビ番組の無料見逃しサービスが売りです。アイドルグループ櫻坂46の冠番組「そこ曲がったら、櫻坂?」など、なかでもテレ東ローカル番組が充実しています。動画配信サービスの基本とも言えるアニメも韓流も揃え、一部有料で購入できる作品もあります。漫才日本一決定戦「M-1グランプリ」関連の独占コンテンツにも力を入れていました。
言うなれば「テレビがインターネット“でも”見られる」という概念でテレビの補完や延長線上のコンテンツが並ぶサービスとして発展してきたわけですが、この5年で動画配信サービスそのものの位置づけはガラッと変わりました。もはやレンタルビデオやテレビに取って代わるメディアとして認識されつつあります。
利用目的も細分化されつつあります。GYAO!と比較した視点でみると、見逃しならTVer、無料を使い倒したいならABEMA、価格重視ならAmazonプライム・ビデオ、独占配信コンテンツならNetflix、ブランド力ならDisney+などといった具合です。GYAO!は2005年から続く老舗というブランド力はあったかもしれませんが、どの切り口においても1番手から遠のいてしまっていました。月間ユニークブラウザ数はGYAOによると1280万(2022年4月)と、TVerのそれと比べると約半分です。終了へと追い込まれたのも無理はありません。
かたや値上げを発表したDAZNは動画配信の定額制サービスの勢力図の中で、Netflix、Amazon、Disney+のグローバル3強に続く、U-NEXTやHuluと並ぶ2番手グループに位置します。会員数は概算ですが、200万人ほどが見込まれます。サッカーJリーグが売りのスポーツに特化したコンテンツ群の割には健闘しています。とは言え、月額利用料金を3700円にまで値上げするとはなかなかの強気です。高額と見られる2530円のWOWOWや2189円のU-NEXTをも上回ります。しかも、1年前の料金と比べると約1.5倍の値上げです。料金がアップする2月14日から同時にライトユーザー層狙いの低価格プランを用意することも発表したことから考えるに、戦略的な勝負に出たようです。
それにしても、1月12日のDAZN値上げ強行突破に、16日のGYAO!撤退告知と、この数日違いの両社の発表はユーザーにとって悲報が続いたという印象は残ります。そもそもなぜ明暗が分かれてしまったのか。そんな疑問も生まれます。
大前提として、動画配信サービスが乱立しすぎたことが挙げられます。世界各国で同じようなことが起こっていますが、日本の状況は極めて競争が激しいと言われています。その最たる理由に、外資系サービスの参入があります。2015年にNetflixとAmazonプライム・ビデオが、2016年にアメリカの投資会社アクセス・インダストリーズ傘下にある今回話題のDAZNが、2019年初頭にはDisney+と、外資系が続々と日本市場に参入しました。