しかし、変化の激しい時代においては、半年先、1年先さえ予測できません。5年後の人事権もない採用担当者がそれを答えさせるのは、あまりにも無責任といえるのではないでしょうか。
「○年後にこうなっていたい」というような「ゴール逆算型」のキャリア形成は、「メンバーシップ型雇用」か「ジョブ型雇用」かに関係なく非現実的です。何度も言いますが、いまのような変化が激しい時代に、先のことは誰にもわからないからです。
たとえ「ジョブ型雇用」であっても、「5年先、10年先にその仕事が必要とされているのか」「そもそも自分に適性があるのか」という問題があります。もっと言えば、「ほかにやりたい仕事」が見つかることも少なくないのです。
3つめは、「充実したキャリア」を築くためには、「好き」や「憧れ」以外にも大切なことがあるということです。
「充実したキャリア」を築くには、次のように「『できること』『やりたいこと』『やるべきこと』の重なりを見つけ、拡大していくこと」が大切になります。
このプロセスには一定の時間が必要です。
仕事の経験を通じて、結果として、どうしても「好きな仕事」「憧れの仕事」にこだわるならば、その後にチャレンジしてもよいのではないでしょうか。
それに、「世の中の変化」や「自身の仕事経験の広がり」によって、「やりたい仕事」はどんどん拡大していくものです。
とくに①~③のように「主体的なキャリア自律」ができていれば、「現在の仕事=やりたかった仕事」と感じるはずです。
そして、「憧れの仕事」や「好きな仕事」が当初のイメージとは変わっていくことも、現実には多いものです。
4つめは、「好きなこと」は無理に仕事にする必要がないということです。
たとえば歴史が好きで、歴史関係の本をよく読み、熱心に勉強する人がいたとします。歴史の知識が仕事と直接関わりがなくても、その人自身の専門性を深める行為だといえるでしょう。
もちろん、長い仕事人生において、歴史の知識が役立つ機会もあるはずです。
人生100年時代に入り、「充実した第二の人生」を送るための「心の糧」として、リベラルアーツ(幅広く普遍的な学び)はより大切になっていくでしょう。
たとえば歴史を学び続けた人は、第一線を引退後も歴史をテーマに国内外を旅行するなど、「充実したセカンドライフ」を送ることができるはずです。
仕事に関係あるなしにかかわらず、「好きなことを勉強する」ことは、人生を豊かにします。
私は、「『好きなこと』を無理に仕事にする」こと以上に、むしろ大切なのは、「自分の好きなこと」を"独学"で学び続けることだと考えています。
「好きなこと」を学ぶのは、それ自体が喜びです。
つまり、自分の「好き」や「憧れ」を無理に仕事にしなくても、「豊かな人生」を送ることは十分可能ですし、仕事以外で「好きなこと」を学ぶことは、キャリアにもよい影響を与える可能性が十分あるのです。
「好きなこと」を"独学"で学び続けることは、