「メタバース」でのデートで恋が発展する理由

コロナ禍では、外出自粛やマスク着用などにより、人から顔を見られる機会が減少したことが一因で化粧品市場が縮小した。今後は、背景は異なるものの、これと同じことが現実世界でのアパレル・化粧品市場に起こると同時に、メタバース上でその代替市場が拡大していく。

現実世界のアパレル・化粧品市場が今後縮小し得ると考える主な理由は、コロナ禍で化粧品市場が縮小したように、人々のメタバース上での活動時間の増加により、現実世界の自分の姿を他者から見られる機会が減るからである。

休日のほとんどの時間をメタバース上で過ごす人が増加するかもしれないし、コロナ禍でリモートワークが一般化したのと同様に、中長期的にはメタバース上でのアバターを用いた労働が一般的になる可能性も十分に考えられる。

アバターを介して仕事をするのは想像しづらいというビジネスパーソンはまだ多いかもしれないが、メタバースの構築に世界最大の投資を行うメタが「Horizon Workrooms」というバーチャルビジネス会議向けサービスをリリースしているように、このような未来が一気に訪れる可能性は大いにある。

また、アバターを介したメタバース内での活動は、外観によるパーソナリティの表現を伴うことから、装飾品市場も拡大していくだろう。

パーソナリティを表現するにあたって、自分自身の外観はその最大の表現手段の1つである。そのため、アバターの自己に対して、人々は、自身が発信する内容だけでなく、その外観にも強くこだわるようになっていくだろう。アバターを用いたパーソナリティの表現は、より現実世界に近づくのではないか。

ルイ・ヴィトンやグッチもメタバースに参入

このような世界が訪れた際に、特に影響が予想されるのは、ファッション性を売りにした商品を扱う事業者やハイブランド事業者であろう。着心地の機能性に強みを持つ衣料品や、スキンケアを目的とした基礎化粧品などは、メタバース上での活動が広がってもなお、消費者からの需要は維持されると考えられる。

ただし、外観や印象を変化させることが目的の商品は、パーソナリティの表現の場が移り変わることによって、現実世界での需要が減少し得ると考えられる。

すでに、ルイ・ヴィトン(LOUIS VUITTON)やグッチ(GUCCI)のような一部のハイブランド事業者がデジタル市場に参入する動きをみせているように、こうした事業者は、自身のブランド力やトレンドを創り出す力をデジタル装飾品市場でも維持すべく、メタバース市場への早期参入を十分に検討する必要がある。