クリスマスに初詣で。デートのプランを考え、楽しみにしているカップルも少なくないだろう。昭和のバブル時代から平成を経て令和に至り、恋人たちの出会いやデートのかたちも変わり、より多様化している。
ここでは、現実世界とは異なるパーソナリティ(実名・偽名を問わず人格や見た目を現実世界とは変えているもの)を用いたインターネットサービスをメタバースとし、それらのサービスを介したBtoCでの消費をメタバース市場(規模)とする。
野村総合研究所(NRI)の推計では、メタバース市場の規模は、2022年度時点で7812億円、2028年度には3兆8085億円に達する。
新たなデジタル空間の普及・拡大に伴って、人々の出会いやデートを含めて、現実世界とメタバースにおける人々の時間の使い方がどのように変わり、それによってどのような消費活動の変化が起きるのかについて論じたい。
今後、人々がメタバースで活動する時間が増加していく。これまでとは異なる空間で過ごす時間が増えると、コミュニケーションや出会いの場も、現実世界から新たな空間にシフトしていくことになる。
そうなると、そこで自分をどのように見せるかという自分自身の表現の仕方が変わるし、そこでの楽しみ方にも新たな体験が出てくるはずである。また、人々が過ごす空間が変わるということは、広告宣伝・販売促進のチャネルも変化する。
従来、第2パーソナリティを求める人々は、「ツイッター(Twitter)」などのSNSで、現実世界の知人とはかかわりのない裏アカウント(いわゆる「裏垢」)を運営することによって、現実世界では表現しきれない自己のパーソナリティを実現してきた。
そこでは、自己のパーソナリティの一部を裏アカウントに投影し、そのアカウントを通じて第2パーソナリティとしての思いや意見を発信し、人々との交流や活動をしてきた。しかし、SNSでは実現できる表現に制約があり、限界を実感していた人々も多かったであろう。
ところが、今後はメタバース上でそうした第2パーソナリティによる発信や交流がより快適になり、デジタル空間上での自己を「本来の自分」と認識できるようになっていく。その最大の理由は、3D仮想空間や拡張現実の世界では、これまで以上に自己のパーソナリティをデジタルアセット(資産として価値のあるデジタルデータ)に投影することが容易となるからである。
新たな空間では、人を模したアバターに自己のパーソナリティを投影し、そのアバターを通じて発信や交流ができるようになる。また、ジェスチャーやアバター同士の距離感、声色といったさまざまな情報を用いることも可能となり、SNSの本質ともいえるコミュニケーションの質も大幅に向上する。
これまで、人々が出会い、仲を深め、恋愛に至る場として機能してきたのは主に現実世界であった。しかし、今後パーソナリティの表現の場として3D仮想空間や拡張現実が拡大すると、現実世界中心の恋愛が仮想空間にも広がる。