アップルはアメリカ時間12月6日から、世界中の開発者に対して順次、App Storeにおける新しい価格設定を適用することを明らかにした。
App Storeは、iPhone、iPad、Mac、Apple TV、Apple Watchといったアップル製品で動作するアプリを扱う市場となっており、アップルデバイス向けにアプリを作るサードパーティーの開発者は世界で3000万人を超え、180万本を超えるアプリが揃っている。
12月6日以降、開発者は最低金額0.29ドルから、最高9999.99ドルまで、700ものプライスポイントを追加する、より柔軟な価格設定を提供できるようになった。
日本円ではどうなるだろうか。10円刻みの場合、最低金額は50円からで、最高2000円まで。100円刻みの価格を設定したい場合は、最低金額100円から最高15000円まで。500円刻みの場合は最低400円から最高49800円まで。日本円で最高のアプリ価格を設定できるのは50000円刻みの場合で160万円となる。
また日本円の価格設定で一般的な終わり方である890円や1980円、12800円といった価格設定にも対応した点で、アプリやサブスクリプションの価格が利用者にどんな印象を与えるかを考慮したマーケティングや価格戦略を展開することも可能となった。
今回のApp Storeの価格設定の刷新で、日本のユーザーにとってメリットとなりそうなのが、「為替に左右されない価格設定の実現」だ。
現在App Storeは175カ国で提供され、44の通貨にまたがっている。日本のアプリ開発者も、その国でのアプリ販売をONにするだけで、その国の通貨での販売をすぐにスタートすることができる仕組みだ。通貨が異なっていても、そのアプリの価格帯を揃えることで、開発者が為替の計算をする事なく、自動的に販売価格が決定される仕組みだった。
つまり、ドルベースで販売価格を決めると、App Store上で自動的に為替が変換されるしくみだった。例えばアメリカで0.99ドルのアプリは、現在日本では160円に設定されている。ここで問題となるのが、為替の急激な変化だ。2022年10月5日のApp Storeにおける為替の調整前は、0.99ドルのアプリが120円だったが、為替の調整で、0.99ドルのアプリが160円に設定される変更があったばかりだ。
これにより、日本のアプリストアの最低価格も120円から160円に値上がりしてしまっており、日本国内の開発者も、本来であれば関係ないはずの為替変動に巻き込まれ、ユーザーにより割高な価格でアプリを提供しなければならなくなっていた。
今回の改訂では、2つの方法で、自動的な為替の影響による値上げや値下げを回避できるようになる。
1つ目の方法は、例えば日本の開発者であれば、日本を基準の国とすることで、日本国内の販売価格を一定の水準にすることができるようになる。日本の開発者からすれば、日本国内が主たる市場であれば、日本でマーケティングしやすい価格を選んで、他国の価格を自動的に調整することで、前述のような、日本のユーザーに割高な価格で提供せざるをえないといった事態を回避できる。
もう1つの方法は、国ごとに価格を自由に設定する方法だ。例えば日本とインドネシアで、同じアプリを異なる価格で販売する設定も可能となる。その国の経済状況や購買力に合わせて売りやすい価格を個別に設定していくことで、アプリのマーケティングに価格戦略を国ごとに盛り込める点は、グローバルに活躍するアプリ開発者にとってもありがたい設定といえる。