「ネガティブ思考な人」のパフォーマンスが高い訳

テニスをする若い女性
一流のアスリートは自分を客観視し、チャッターをうまくコントロールできるので、常に最高のパフォーマンスを発揮できます(写真:FS-Stock/PIXTA)
「明日のプレゼンはうまくいくだろうか」「昨日はあんなことを言ってしまった」など、私たちは日々、頭の中で話をしている。
このような「頭のなかのひとりごと(チャッター)」はしばしば暴走し、あなたの脳を支配し、さまざまな問題を引き起こしてしまう。
一方、この「チャッター」をコントロールすることができれば、あなたは本来持っている能力を最大限に発揮できるという。
賢い人ほど陥りがちな「考えすぎ」をやめる方法とは何か? 今回、11月に日本語版が刊行された、40カ国以上で刊行の世界的ベストセラー、『Chatter(チャッター):「頭の中のひとりごと」をコントロールし、最良の行動を導くための26の方法』について、『自分の最高を引き出す考え方』の著者でスポーツ心理学者の布施努氏に話を聞いた。前編と後編の2回に分けてお届けする。

アスリートが用いる「自分のノート」

『Chatter(チャッター):「頭の中のひとりごと」をコントロールし、最良の行動を導くための26の方法』。(書影をクリックすると、Amazonのサイトにジャンプします。紙版はこちら、電子版はこちら。楽天サイトの紙版はこちら、電子版はこちら

野球やラグビーなどのチームにおける心理的な側面からのコーディネートや、個人のパフォーマンスを上げるサポートを行うのが、スポーツ心理学の役割です。

実際に行っていることは、『Chatter(チャッター)』に書かれていることと深く通じることが沢山あります。

本書に、日記を書くことの効能が取り上げられていますが、実際トップアスリートにも、自分のノートに日々のことを書き込んでもらっています。

例えば、日本代表ラグビーの齋藤直人選手は、自分のラグビーノートを持っていて、そこに、今の自分には何が起きていて、どんなことを不安に感じるのかを毎日書いています。

そして、「齋藤直人、こういう時はどうするんだ?」と客観視し、自分に語り掛けるということをやっているのです。この点は、本書の内容とまったく同じです。

野球の社会人日本代表チームは、専用の野球ノートを作っていて、選手全員が、自分のノートを持って遠征しています。

「チャッターから逃げる」のではなく、視点を変えたり、問題からあえて離れたりすることが大事と書かれていますが、ここは重要なところですね。

ネガティブなことからは逃げられません。よく「ポジティブになろう」と言いますが、勘違いです。トップアスリートは、そう簡単にポジティブにはなれません。

特に、試合前日になると、こんなことが起きるかもしれない、こうなったら困る、ということがたくさん頭を巡って、非常にネガティブになっています。

しかし、実際には、そういう人ほどいい選手なのです。

ネガティブな思考を無理やり押さえ込んでしまうと、実際にそれが本番で起きた時、対処できなくなってしまいます。不安に向き合って、リスクを想像して対処する方法を想定しておかなければ、いいパフォーマンスは出せません。

ですから僕は、いい選手のことを「ネガティブな人」ではなく、「リスクマネージメントができる人」と言っています。

アスリートだけでなく、ビジネスパーソンでも、パフォーマンスの高い人ほどネガティブなことに目を向けることができますし、対処ができている人が多いと思います。

最低目標を立ててコントロールする

プロのアスリートは、不安に思うことをノートに書き出しながら、「このような場面になったとしても、最低限、これができるのではないか」という最低目標を作っていきます。