よく、「私は採用したかったのですが、上の者が……」などと言い訳を先に並べる人がいます。対面でも何を言いたいのかわかりづらいですが、表情や声のトーンが伝わりにくいオンラインでは、「結局、採用なの? 不採用なの?」と、イライラしてしまいます。
あるいは、「細部までよく練られた、とても素晴らしい提案でした。メンバーの感触も好意的でした。ただ、私は反対です」というような、最後に結論がひっくり返る言い方も聞いているほうは予想を裏切られて戸惑ってしまいますのでやめましょう。
2つめのポイントは、主語を省略せずに話すことです。日本語は主語を省いても意味が伝わる言語ですが、オンラインコミュニケーションの場合、主語を省略すると混乱が生じることがあります。
たとえば、相手が「確認しました」と言ったとします。英語では「I checked.」と、主語が必要です。しかし、日本語の「確認しました」には主語がないことがほとんどです。これだけでは確認したのが目の前の相手なのか、チームのメンバーや上司など別な人なのかがはっきりしません。商談の場では、目の前の担当者ではなく、上司に決裁権がある場合も多々ありますので、この違いが成果に大きな影響を与えます。必ず確認するようにしましょう。
もちろん、自分が話す際も「私は確認しました。でも上司のAにはまだ確認していません」、もしくは「私はこう思います。でもBさんはこう言っていました」というように、常に主語をつけるようにしたいものです。
これらは、対面のコミュニケーションでも心がけるべきですが、前後の文脈が読み取りにくいオンラインコミュニケーションではより大事です。?結論から話す、?主語を省略せずに話す。この2つを、ぜひ意識してください。
オンラインコミュニケーションの特徴の1つに、対面のときよりも聞き返しにくい、という点があります。相手の話に割って入るのが難しいので、「先ほどの〇〇ってどういう意味ですか?」「先ほどの発言は、どういう意図ですか?」と聞きにくいのです。その結果、理解が追いつかず、真剣に聞く気がなくなってしまったり、集中力が下がったりしかねません。
そこで心がけるべきなのが、難しい言葉や相手の知らない言葉を使わないことです。特に、気をつけるべきは、「コンセンサス」「エビデンス」などのカタカナ語、業界特有の言いまわし、専門用語などです。
自社ではよく使っている言葉でも、お客さまに通じないかもしれません。相手が知らない可能性のある言葉を使うのは避けたほうがいいでしょう。
また、「なるはや(なるべく早く)」、とか「今日中に」といったあいまいな言葉は、行き違いや誤解、ミスを生む原因になりますので、使わないほうがいいでしょう。
たとえば、「なるべく早く」のとらえ方は人によって大きく違います。10分以内かもしれないし、1週間以内かもしれません。「今日中に」という表現も同じです。「今日の終業時刻まで」ととらえる人なら17時くらいまでと考えるでしょう。「日付が変わるまで」ととらえる人なら23時59分までです。人によって、7時間も差が生じてしまうわけです。
よく、期日を指定する際に、相手への配慮のつもりであいまいな表現を使う人がいますが、その気遣いがかえって相手を困らせてしまったり、自分を苦しめたりすることにもなります。商談相手があいまいな言葉を使うようなら、しっかり確認する習慣をつけましょう。
逆に、積極的に取り入れたいのが、お客さまの社内用語に合わせることです。たとえば取引先の人事部で、「ヒューマンマネジメント」という言葉を使っているとしましょう。でも、自社では同じ意味で、「ピープルマネジメント」という言葉を使っている。この場合は、「ヒューマンマネジメント」という言い方に合わせたほうがいいのです。相手が普段使っている言葉に合わせたほうが、相手を疲れさせずにすみますし、話に対する理解度や集中力も高まります。
また、先方の社内用語を使うことは、仲間意識を醸成し、「この人になら、何を話しても大丈夫だろう」という安心感を与える効果もあります。
たとえば、取引先の企業で、課長代理のことをローマ字読みの頭文字をとって、「KD」と呼んでいたとします。このような独自の用語をお客さまが使っているとわかったら、自分も「今日、山田KDはお休みですか?」というように積極的に使うといいでしょう。ぐっと関係が近づいたような印象を与えます。