任天堂、爆売れの「ポケモン最新作」で露呈した急所

残念ながら、『ポケットモンスター スカーレット・バイオレット』には問題が多い。とくに指摘されているのがゲームの動作についてであり、広いフィールドを移動しているとフレームレートが低下する問題だ。

フレームレートとは、1秒間の動画で見せる静止画の枚数(コマ数)のことで、テレビゲームは1秒間に30~60程度の静止画を連続で表示する。フレームレートが高ければ高いほど映像はなめらかになるし、安定した数値を出せていると快適にプレイできるが、低下すると動きが遅く感じられたり、思いどおりに動かなかったりしてストレスの原因になる。

『ポケットモンスター スカーレット・バイオレット』は描画範囲も狭く、少し遠くにいるポケモンや人物は動きがカクカクになってしまう。もちろんこれらは程度問題で気にならない人もいるわけだが、しかし多くの評論家やユーザーから「問題である」と言われてしまっているのが現状だ。

この問題は『ポケットモンスター スカーレット・バイオレット』の開発期間が足りなかったことが原因と考えられる。前出の『ゼルダの伝説 ブレス オブ ザ ワイルド』や『Pokémon LEGENDS アルセウス』はゲーム内容が近いもののフレームレートは安定しており、違和感を抱くことは少なかったからだ。年末近くという発売日に合わせるため、きちんとした描写ができるように調整するのが間に合わなかったのではないか。

ユーザーのなかにはこれらの問題が“Nintendo Switchのスペック不足”だと考える人もおり、そこからハイスペック版のNintendo Switchを求める声も上がっている。

その原因が正しいかどうかはさておき、実際、Nintendo Switchがスペック不足のゲーム機であることは否めない。

人気バトロワゲーム『Apex Legends』など、PCやほかのゲーム機で人気だったタイトルがNintendo Switchに移植されることはかなり多いが、スペック不足ゆえか、グラフィック表現が犠牲になったり、作品によっては演出などが削られたりしているケースもある。

Nintendo Switchの有機ELバージョン
Nintendo Switchは2021年10月に有機ELバージョンが登場しているが、これはディスプレイなどが変更されたもので、スペックが向上したものではない(画像は任天堂公式サイトより)

次世代機へのバトンタッチはうまくいくのか

これまでの家庭用ゲーム機は6年前後で次の世代に移り変わるケースが多い。しかし、Nintendo Switchはすでにスペック不足を感じさせるのに、6年目となる2023年もさまざまな新作が出ると発表されている。一方、次世代機はいまだ発表されておらず、しばらくは現役であると考えられる。

少なくともいまNintendo Switchは絶好調だが、はたして今後頻出するであろうスペック不足という問題にうまく対応できるのだろうか。また、調子がよすぎるゆえに次の世代へのバトンタッチはうまくいくのか、という不安も残る。

任天堂が2009年に発売したWiiは全世界で1億163万台を売り上げたが、その次の世代であるWii Uは全世界でも1356万台しか売れていない。仮にNintendo Switchがバトンタッチを先延ばしにするとしても、それはそれでスペック問題がどんどん迫りくるというわけだ。

『ポケットモンスター スカーレット・バイオレット』は紛れもなく大ヒットしている作品だが、同時にNintendo Switchを取り巻く難しい状況も浮き彫りにする。はたして次のポケモンが出るころ、任天堂のゲーム機はどのような状況に置かれているのだろうか。