コロナ禍で20~50代の投資が飛躍的に伸びた理由

家計の先行きについての不安の拡大と明確化、金融知識の学習のための時間、より取り組みやすい入門編の商品やサービスの登場などの環境整備、の3つの要素がそろったことにより、金融投資に着手する人が大きく増えたのだ。

20代から50代の就業層で飛躍的に伸びた

結果、「投資をしている」と答えた人の割合は、20代から50代の就業年齢層で、前回調査の2018年から今回調査の2021年にかけて、飛躍的に伸びた。

20代は5%から12%へ、30代は13%から19%へ、40代は16%から20%へ、50代は18%から23%へと、それぞれ数ポイントの拡大だった。

同様に、「投資はしていないが興味はある」も、50代以下の若年・中年層で伸びているのだが、こちらは2015年から2018年、2021年へとイーブンペースでの拡大となっている。以前から「先の備え」に対する不安により高まりつつあった投資への関心を、直近コロナ禍でさらに高まった生活防衛意識と余剰時間、入門向けサービスの拡充をきっかけに、実行に移しはじめたのである。

なお、ここで扱っている投資とは、「リターン(利益)を得ることを目的に株式・債券・投資信託などの金融商品を保有・売買することを指します。不動産や美術品などに対する投資は含みません。」との注釈つきで聴取した、金融投資を指す。

商品別では「株式」、「投資信託」が、保有率・今後の保有・増額意向ともに伸びている。一方で、減っているのは「定期預金」、「郵便貯金」などであり、まさに金融庁の提唱してきた「貯蓄から投資へ」が、ここにきてようやく実現し始めたことになる。

さらに、「クラウドファンディング(新商品の開発プロジェクトや社会貢献事業など、応援したい事業に投資や寄付ができるサービス)」についても、10代から70代までの全年代で、認知率・利用意向・利用経験が高まっており、新しい金融投資についても拡大傾向が見え始めている。

貯蓄などの守りの備えから、より積極的に資産を増やす方向へと、消費者は動き始めている。

物価高・円安でも、スイッチはONに

ここへきて、物価高・円安の影響が気になる。物価高が家計に負担を与え貯蓄・投資に回せる余力は減るはずだ。また、急激に進む円安の先をどう見るか、外貨建ての運用にも不安は残る。

一方、インフレ対策として長期的な資産運用を進めるべきという考え方もできる。消費者によるGo or No Goの判断は今後現れてくると思われるが、いずれにしても金融投資を「始めた」人が多いことは間違いない。金融投資の知識をつけ、これまで高かった敷居をまたぎ、実際にやってみて経験を積んだ消費者の割合は大きく増えたのだ。

将来の「備え」に漠然とした不安を抱きながらも、日々の生活に忙しく、なかなか行動にうつせなかった日本の消費者。しかし、ここにきてスイッチを「ON」にした人は多かった。

増やす、減らす、中断するなどの一時的な増減はあるものの、ハンドル操作しながら長期的には飛び続ける「個人投資家」の数自体は、今後減ることはないだろう。

日本の個人投資の活性度は、コロナ禍で一段上がったのである。