宇宙活動法と同じ種類の法律は世界各国で決められていて、米国はその先進国として宇宙開発に取り組む企業を法律面でも支援してきました。今年で設立から20年となるスペースXは、独自開発ロケット「ファルコン9」、「ファルコンヘビー」を1カ月に何回も打ち上げ、総数はこれまでで183回。さらに毎週の打ち上げを実現しようとペースを加速しています。なぜそれほど多くのロケットを飛ばせるのでしょうか?
これは「再利用」という、ロケットの機体が打ち上げ後に自力で地上に戻ってくる仕組みによって可能になりました。
従来の「使い捨て」「使い切きり」と呼ばれるロケットは、打ち上げ後に機体の多くは海に落下します。ですから、1回ごとに新しく機体を製造する必要があります。
一方で再利用ロケットは戻ってきた機体を点検・補修して燃料を詰め直せばよいので、次の打ち上げまでの時間を大幅に短くすることができます。多く飛ばすことで、1回あたりのコストも安くなります。
再利用ロケットはスペースXオリジナルのアイデアではないのですが、これまで米国や日本で長く研究されながらも実用化されていませんでした。イーロン・マスク氏は、IT企業のリーダーとして成功したやり方をロケット開発にも適用しています。
私が知るスペースXのエンジニアたちは、IT企業のように自主的に技術を改良して長時間の燃焼が可能なエンジンや、船の上にロケットが戻ってくる飛行制御などを実現してきました。
2015年に初めて、衛星を打ち上げた後のロケット第1段(最も大きな部分)が無人船の上に着地する実証に成功。以来145回のロケット着地を成功させ、120回の再打ち上げに成功しています。中には10回以上も使用された機体もあります。
再利用の考え方は、ロケットだけでなくスペースXの宇宙船「クルードラゴン」でも徹底されています。私が2020年にNASA初の民間宇宙船による国際宇宙ステーションへのフライトで搭乗したクルードラゴン「レジリエンス」号は、2021年に世界初の民間人だけの宇宙飛行「インスピレーション4」のクルーを乗せることになりました。
再利用を徹底したことで、スペースX自身が進めている世界規模の衛星インターネット網「スターリンク」の衛星を3000機以上も展開することが可能になりました。各国のその他のロケットも次々と再利用を目指し始めています。
ロケット再利用を実現し、高速打ち上げを実現したこと。これがスペースXの快進撃の理由なのです。