「海賊王におれはなるっ!!!!」
そんな主人公ルフィ少年が大活躍する、尾田栄一郎さんの国民的人気漫画『ワンピース』。
この漫画の人気が出始めの頃、僕の友人たちの間でも、「『ワンピース』がめちゃめちゃ面白い」と噂になっていました。でも、いくら『ワンピース』が面白いと言われても、僕は買うことはなかったんです。みんなが面白いっていうので、面白いのは間違いないだろうとはわかっていました。でも、僕としては他にも読みたい本が100冊以上、部屋に積まれてる現状なので、買うまでには至らなかったんです。
それが、ある時、友人がこう言ったのを聞いて、当時出ていた『ワンピース』全巻を即座に買ってしまいました。その一言とは……。
「『ワンピース』を読むと、友達を命がけで守りたくなる」
「めちゃめちゃ面白い!」と何人から言われても買わなかったんですが、「『ワンピース』を読むと、友達を命がけで守りたくなる」と言われたらその日に、全巻買ってしまいました。
「めちゃめちゃ面白い!」では買わなかったのに、
「『ワンピース』を読むと、友達を命がけで守りたくなる」
では即座に全巻買ってしまった。この2つは何が違うんでしょうか?
ここに伝えることの本質が隠れています。考えてみてください。
ヒントとして、もう一例あげましょう。「I love you」という言葉が日本に入ってきたときに、当時、英語の先生をしていた文豪・夏目漱石はどう訳したと思いますか?
「私はあなたを愛しています」ではなく、夏目漱石はこう訳したそうです。
「あなたといると月がきれいですね」
あなたがいるといつもの風景がなんだか違って優しく見える。夏目漱石は「I love you」を心の風景として描いたのです。
これでわかりましたでしょうか?伝えるって、相手の頭の中に、言葉で絵を描くことなんです。
面白い伝え方というのは、頭の中に具体的で、印象的な絵が浮かぶのです。相手の頭の中に絵が浮かぶと、「伝える」は「伝わる」になるのです。
「面白い!」や「愛しています」を絵に描いてくださいと言われても、抽象的だし、浮かびにくいですよね。
でも、「『ワンピース』を読むと、友達を命がけで守りたくなる」のほうは、命がけで友達を守ろうとする絵が浮かんできますし、「愛しています」より、「あなたといると月がきれいですね」のほうが印象的な絵が浮かびます。さすが、吾輩は猫である、ですね!
日常会話でも、「美味しかった」「楽しかった」「悲しかった」「嬉しかった」だけでは、相手に響いてないんです。「面白かった」「美味しかった」と何万回伝えても、相手の頭の中に具体的な絵が浮かばないからです。
頭の中で絵が浮かばないと、相手の記憶(印象)に残らないんです。
話が面白い人って、相手の頭の中に印象的な絵を描ける人なんです。
例えば、「美味しかった」ひとつでも、こんな風に表現すればぐっと印象に残ります。