拙著『ヒトが持つ8つの本能に刺さる 進化論マーケティング』でも詳しく解説しているSEIQは「イノベーションに欠かせない7つの本質的な質問」(The Seven Essential Innovation Questions)の略で、ストラテジストのビル・オコナーが、カリフォルニア大学バークレー校との共同研究で開発したものです。
オコナーらは人類の歴史を旧石器時代から洗い直し、現代までに世に出た発明のなかで影響力が大きかったものを1000種類近くも選別。通貨、カメラ、コンピューター、インターネット、ジャズ、フェイスブックなどのイノベーションが生まれた背景に共通するパターンを約60種類にまで集約したうえで、それぞれを7つの質問としてまとめました。その結果できあがったのが「SEIQ」です。
注目すべきは、過去260万年におよぶ人類の歴史からイノベーションの事例を集めたところでしょう。「オズボーンのチェックリスト」や「SCAMPER(スキャンパー)」のように、創造性の改善に使われる質問セットはいくつか存在しますが、先史時代から現代におよぶ発明の歴史を掘り起こした研究は他にありません。
調査の対象には、火の使用、車輪の登場、ゼロの概念といったものまで含まれており、人類が起こしたイノベーションの精髄が詰め込まれています。商品に新たな魅力を加えたいなら、使いたい内容です。
SEIQは7つの質問で構成され、1問目から順番に答えを考えていきます。
一見すると簡単そうな質問ばかりですが、筆者が実際にSEIQを試してきた経験では、「いくら考えても答えを思いつかない……」という状態におちいってしまう人をよく見かけました。
SEIQはシンプルさが売りですが、質問の抽象度が高すぎるせいで、具体的なアイデアを出しづらい面があるようです。
もしSEIQの質問を見てもアイデアが浮かばないときは、どんどん次のクエスチョンに移って考え続けるのがいいでしょう。
あまり深く考え込まず、思考が詰まったらすぐ次の質問に切り替えるのがポイントです。何かおもしろいアイデアが浮かんだら、どんな小さなことでもいいのでメモしておきましょう。
複数の事例からもわかるとおり、SEIQの問いは、新たな価値を生み出す大きな力を持ちます。いずれの質問も人類の発明史を貫く共通のパターンであり、私たちの祖先は、みな似たような思考法を使って偉大な成果を成し遂げてきたのです。
抽象的な質問が多いため最初はてこずるでしょうが、SEIQの質問は、使えば使うほど多様なアイデアを思いつく確率が上がります。
そもそもSEIQとは、過去の偉大な発明家の思考プロセスを「質問」として言語化したものなので、何度も使ううちにイノベーターの考え方が脳に染み込み、やがて意識せずとも使いこなせるようになるはずです。
その意味でSEIQは、日常的なアイデアトレーニングとして使うこともできるでしょう。
100円ショップの商品、行きつけの定食屋、友人のツイートなど対象は何でもいいので、身の回りのものにSEIQを使いつつ、「ここに別の価値を加えるとしたら?」と。日常的な“問い”の繰り返しは、やがてその人の脳をアイデア製造機に変えてくれるはずです。