「アスペルガーやADHDなどの気質のある人にもその傾向が強い」という見方もあります。
人は「social cue(社会的合図)」と言われる信号を、常に発信しています。しぐさや表情などから、「相手が自分の話にどれぐらい興味を示しているのか」を読み取り、話題や話す量をコントロールするわけですが、その信号を読み取ることができないという人も少なくありません。
アメリカの調査では、5.2%、ニュージーランドの調査では、4.7%が「話中毒」という結果でした。つまり、おおよそ5%、20人に1人にその傾向があるということのようです。
では、人はなぜ、しゃべりすぎてしまうのか。それは、人間は基本的に「自分の話を聞いてほしくて仕方ない生き物」だからです。
「自分のことを話すとき、それが会話でも、ソーシャルメディア上でも、人は強い快感を覚える」
ハーバード大学の神経学者が2012年に、こんな驚きの研究を発表しました 。
被験者の脳を、MRIを使って調べたところ、自分のことを話すとき、食事やセックス、お金やドラッグなどと同様に、「快楽ホルモン」ドーパミンを分泌するシステムが活発化することがわかりました。
つまり、気持ちよさそうに自分の話をして止まらない人は「脳内セックス」状態にあるともいえるのです。
「お金をもらうよりも、自分の話をすることを選ぶ人のほうが多かった」という実験さえあります。
「人が自分の話に耳を傾けてくれている」という状態は、「自分の存在が認められている」「誰かが自分を理解してくれようとしている」ということ。それをうれしく思わない人はあまりいません。
とはいえ、そんな誰かの「セルフプレジャートーク」に付き合わされるのは本当に苦痛ですよね。
「滔々と自分の話をするばかりの人」に私も時々出くわしますが、気分は最悪です。
「うるさい!」「私の時間を勝手に収奪するな」と言いたくなりますが、コミュニケーション研究家として、そういうわけにもいきません。
「気持ちのいい会話」を心がけているので、なるべく傾聴し、うなずき、反応をし、なるべく他の人にも話を振ろうと努力をしてきました。
雑談や会話は、双方がいい気分になり、「もう一度会いたい、この人と一緒に仕事をしたい」と思わせることがゴールだとすれば、そうした「会話ナルシスト」たちは、その目的達成には失敗しています。
その場をやり過ごし、「二度と会わなければいい」わけですが、なかには上司や同僚など、どうしても付き合いを続けなければならない人もいるでしょう。
その場合、ある程度は聞いて、限界に達した場合、
というかわし方もあります。
それよりも、もっとダイレクトに「しゃべりすぎじゃない。ちょっと黙って!」と言えたらスッキリするのかも、と思うわけですが、それをやってしまっては、相手の気分を害し、自分も嫌な気持ちになってしまう……。
では、相手を黙らせるのに効果的な手法はあるのでしょうか?
ノルウェーとアメリカの学者が共同で、「どのような反応をすると、相手が話すようになったり、話をやめたりするのか」の実験をしました。
「相手の言うことに同意をする」「相手の言葉を遮る」などいろいろなシチュエーションを試したところ、結果として、一番、相手を黙らせることに効果があったのは、「沈黙」だったそうです。
「話す相手が想像以上に静かにして、反応をしなかった」ことによって、話す量が減ったという結果でした。
「『会話ナルシスト』に必要以上の反応をしてしまうと、増長し、ますます話が止まらないというループに陥ってしまう」ということのようです。
会話の基本は「相手の話」をよく聞き、「質問」をしていくこと。これで相手は気持ちよく話してくれるわけです。
良好な関係性を継続したいということであれば「しっかりと聞く」という動作は必須ですが、「無理な我慢をしてまで、聴き続けてあげる必要はない」ということなのです。