ITエンジニアと意思疎通できない経営感覚のズレ

(写真:kou/PIXTA)
デジタル変革により、ITエンジニアなどのDX人材を採用する企業が増えている。しかし、ITエンジニアを雇用したものの、他部署との特性の違いゆえに互いにうまく意思疎通が図れないことも。コンサルタントとしてITエンジニア採用やチームビルディングに関わっている久松剛氏に、ITエンジニアの志向について解説してもらった(※本稿は『ITエンジニア採用とマネジメントのすべて 「採用・定着・活躍」のポイントと内製化への道筋が1冊でわかる』より一部抜粋・編集してお届けします)。

ITエンジニアの志向の傾向

ITエンジニアではない経営層の人と話をしていると、「開発者が何を考えているのかわからない」という声を多く聞きます。ITエンジニアの担当領域の専門性が高いことに加え、IT技術トレンドの変遷が早いことから、ITエンジニアの特性について難解な印象を抱く人が少なくありません。ここでは特徴的なITエンジニアの志向をいくつか紹介します。

木を見て森を見ずと言うものの、木と向き合っているので木ありきで考える

組織改善の文脈でよくもらう相談としては、「強すぎる営業組織(Biz)に対して開発組織(Dev)のプレゼンスを高めたい」という悩みもあれば、「開発組織に営業組織が遠慮してしまい、どうにも制御できずに開発遅延が続いている」「履歴書を見る限り優秀な人材が揃っていると思うのだが、その優秀さを活かし切れていない気がする」という悩みもあります。

Bizが強すぎると開発サイドには社内受託感が拡がり、逆にDevが強すぎると妙な忖度とともに開発遅延が起きたり、企画部門が思い描いたアウトプットイメージと違うものができたりしがちです。

ビジネスではBizとDevのバランスを取ることがゴールではあるものの、お互いの生態が違いすぎるがゆえに相互理解できないという現状があります。

課題があると解きたくて仕方がない

Biz側からの相談で「社内のITエンジニアに『こういうことってできる?』と話しかけたところ、急にそれまでの作業の手を止め、ものづくりを始めてしまった。質問しただけであってまったく急ぎではないのに時間を使わせてしまったようで申し訳ない」というものがあります。

差し込みで業務依頼を受けやすいポジションのITエンジニアに多い傾向にありますが、何も指定のない「こういうことってできる?」という問いに対して、ITエンジニアは、「できる」「できない」の判断を求められていると捉えず、「今この作業をしてもらうことはできるか?」という要求として捉えることがあります。

こうしたコミュニケーションを取ってしまうITエンジニアに対しては、質問なのか要求なのかを明確にしたうえで、必ず期限や優先順位をあわせて伝達する必要があります。

ゾーンを重んじる

集中を遮られることに嫌悪感を示すITエンジニアは少なくありません。何かしらの論理的な思考を巡らせるのがITエンジニアの主たる業務であるため、集中している時はそっとしておいたほうが上がってくるアウトプットもいい傾向にあります。

一度集中を中断すると、再度集中状態に戻るのに時間がかかるため、アウトプット品質に影響します。企業によっては「No meeting day」を設定して業務に集中する日を決めているところや、ミーティングは集中できる午前中を避けているところもあります。

出社が必要な場合、電話からは遠ざけるべきでしょう。こちらの都合を考えずに鳴る電話は集中の妨げになります。可能であれば電話に出る業務を外部委託してしまうこともおすすめです。何度か見かけた事象として、開発担当の周りの内線が引き抜かれていたり、OAフロアの下に幽閉された電話を見つけたりしたこともあります。