SNSで測定、記録的猛暑が日本の「緊張」を高める

2015年以降、顕著に高まったのは、2020年10月9日であり「混乱」指標が通常時より28%増となっている。その他の指標は大きな変動はしていない。GoToイートのポイント付与事業において仕組み上の不備を指摘され、当時の野上農林水産大臣が会見を行っている。コロナ禍でのGoToトラベル実施における混乱をそのまま引き継いでしまった背景や、10月1日には日本学術会議の任命拒否問題が報道され、政府批判が強くなっていた時期でもある。

2018年6月6日~6月14日のおよそ1週間は、政治に関する様々な出来事が重なることで、混乱が高まった時期だ。「加計学園問題」で国会が長い議論を続けている時期であり、「混乱」指標が通常時の10%~20%程度高めで推移した。

この時期には「中国海警局の領海侵犯」「新幹線車内の殺傷事件」などが起きていて、複数並行して指標に織り込まれていると考えられる。また、5月にはトランプ米大統領が6月に予定の米朝首脳会談の突然の中止を宣言し、一時は政治や株式市場まで混乱させる様子を見せた。当初予定日の6月12日に開催するかどうか直前まで大きく話題となったことが「混乱」指標の高まりを見せている。最終的に、6月12日に米朝首脳会談が予定通り行われたことから、その後、落ち着きを見せている。

日本の空気感として、「緊張」の空気感は1つの災害で高まることが多いが、「混乱」するかどうかは、複数の政治的な要因が影響していることが多い。1つの象徴的な出来事が、日本を混乱させるのではなく、複数の要因が重なったことで混乱させるようだ。

そのため「混乱」指標が高まってきた時には注意が必要だ。「緊張」指標のように、災害が続かなれば数日で元に戻るわけではない。複雑な要因で高まった混乱を落ち着かせることは簡単ではない。「混乱」指標が高まった場合には、その要因を紐解きながら、具体的な対策を提示し、時間をかけて落ち着かせることが求められる。

「緊張」や「混乱」と異なり、「怒り」指標は、大きく変動する機会が少なく、出来事などの影響を受けることが少ない。「怒り」指標は、週間の周期変動として、平日において高くなり、休日において低くなるという傾向が顕著であるが、中長期で見ると安定した推移を見せている。

日本人における「怒り」という感情は、何らかのニュースや事件では動きにくいようだ。「緊張」や「混乱」といった心理状態は、他者に大きく影響を与えるが、「怒り」は、個々人の内々で完結してしまい、周囲の人に伝染しにくい心理状態なのかもしれない。

前向きなメッセージが「活気」を呼び込む

「活気」の指標については、2015年から2019年末ぐらいまでは、ゆるやかに右肩上がりで高まってきた。国内景気が良かったことを受けて、「活気」の空気感は高まっていったと考えられる。

2015年以降で、短期的に「活気」が跳ねたタイミングが2回ある。1回目が2019年の7月だ。この時期に大きな出来事はなかったが、東京オリンピック1年前で、国内の空気感が、非常に前向きになっていたタイミングだった。この後、新型コロナの影響で、1年延期することになるが、2019年7月の時点では、日本の空気感は「活気」が高まっていた。

「活気」が高まったタイミングの2回目は2020年の6月だ。2020年の初頭から新型コロナが流行し、1回目の非常事態宣言が解除されたタイミングだ。その後、2回目、3回目の宣言が出ることは想像できていない状況で、感染症という国難を乗り越えたという安心感が「活気」の空気感を高めたと考えられる。

このように「活気」という空気感は、日本人が前向きになれる出来事があるタイミングで高まる傾向にある。東京オリンピック1年前の時も、新型コロナの緊急事態宣言の解除も、個々人に具体的なメリットがあったわけではない。“これから良くなるぞ”という前向きなメッセージが、活気の空気感を高めたと言えるだろう。一般生活者に対して、わかりやすいメッセージを発信することでも、空気感は変えられるのだ。

「日本の空気感指数」の動きを見ながら、空気感を大きく動かした出来事を振り返った。今後、空気感を変えたいと思った時に、今回の分析結果を、政策やマーケティング戦略の検討に役立ててもらいたい。