この本は、読んだ人の人生に与えるインパクトがとても大きい一冊ですね。
私は、尊敬するメンターのことを思い浮かべながら読みました。その方からお聞きしてきたのと同じ内容が書かれていて、さらに、それが体系的に整理されている。これはすごいことだと思いました。
セレンディピティは、これまで「運」という言葉で片づけられていました。「セレンディピティがあったんだ」と言うと、「ああ、運に恵まれて成功したんだね」と。
そうした状況ですから、「セレンディピティを大事にしている」と堂々と人前で言い出すことは難しかった。そう言うと、神頼みや占いにはまっている人のように見なされてしまうのではないかという恐れがあったからです。
しかし、実際のところ、グローバルな経営者は、みんなセレンディピティを大事にしています。私がダボス会議で出会った仲間もそうでした。特に、アフリカなどハードな地域から出席しているリーダーたちの多くは、誰もがそう口にします。
本書のプロフィール欄には、著者のクリスチャン・ブッシュ氏も起業家で、ダボス会議(WEF)のエクスパートフォーラムのメンバーだと書かれています。
LSE(ロンドンスクールオブエコノミクス)やニューヨーク大学でも教鞭もとっているという彼のいちばんの貢献は、セレンディピティを単なる偶然や運としてではなく、「マインドセットによって高められるものだ」というサイエンスにしたところです。
成功している人は、セレンディピティを上手に活用しています。
予想外の出来事が起きた時、それは変化のトリガー(きっかけ)だと気づき、受け止め、一見無関係に見えた点と点をつなげていくことでセレンディピティに至る。それができるようになるための「マインドセット」があり、鍛えることができるというのが本書の主張です。
もちろん、運は運としてありますが、それは最初のステップにすぎない。その最初のステップを幸運につなげていくプロセスが大事で、著者はセレンディピティを「スマートラック(賢く手繰り寄せる幸運)」とも表現しています。
ではどうすれば「スマートラック」を手にできるのか。これまでは科学的な説明はなされていませんでした。
ブッシュ氏はそこを研究し、再現可能なワークアウトとして紹介しています。セレンディピティは、手順を踏んで高めることができる。従来思われていたような、単なる運や偶然ではなかったわけです。
私自身、各章の終わりにまとめられているワークアウトに取り組んでいけば、もっといい人生になるという共感と確信があります。ですのでさっそく、私もまだやったことのなかったワークに、トライしているところです。