「自ら悩みを解決できない人」に欠けた数学的思考

シンプルに考えましょう。“悩み”を「理想と現実のギャップである」と定義することで、悩みを解決するためには2つの情報が必要だということが分かります。

2つの情報とは、理想と現実のことです。

繰り返しになりますが、“悩み”は理想と現実のギャップのこと。ならば、悩みを解決するためには“理想が何か”、“現実が何か”をそれぞれ具体的にする必要があります。

たとえば、「最近太ってきた」という悩みを解決するためには、理想と現実の情報が必要です。

現在の体重が53kg、理想の体重が50kgだとすると、理想と現実のギャップは(現実の体重)-(理想の体重)です。つまり、53kg-50kg=3kgとなります。仮に、現実の体重が53kgではなく60kgだった場合は、理想と現実のギャップが10kgとなります。

現実の体重が53kgをケース1、現実の体重が60kgをケース2として表現すると、上図の通りギャップの数値が異なります。

さて、人間は3kg痩せるのと10kg痩せるのでは、どちらが大変でしょうか?おそらく、10kgと答える方が多いでしょう。

また、3kg痩せるのと10kg痩せるのでは、ダイエットの仕方も変わってくるはずです。

つまり、ギャップの数値(悩み)が違うということは、解決法も変わります。10kg痩せることが“解決”なのに、3kg痩せる方法で頑張ろうとする。これではうまくいかないことは明らかでしょう。

しかし、実際の日常生活やビジネスシーンで、私たちはこれと似たような「報われない努力」をしていないでしょうか。

まずは悩みを定義すること

ここまでの内容をまとめると、悩みを解決するためには解決法が必要ですが、解決法を見つけるためには、まず、「そもそも悩みが何か」をハッキリさせることが大切です。悩みは理想と現実のギャップなので、理想と現実をハッキリさせないと、悩みもハッキリさせることができません。

つまり、悩みを自分で解決できない人は、さっきのダイエットの例のように、体重が3kg多いことが悩みなのか、10kg多いことが悩みなのか、悩み自体をハッキリ定義できていません。そして、定義できていないものは解決できないのです。

また、上図ではケース1とケース2において、現実の体重から理想の体重を引き算しています。悩みは引き算で表すことができます。このように、悩みとは必ず引き算で表すことができるのです。まとめると、次のようになります。

(悩み)=(理想)-(現実)
イコール〔=〕の左側をゼロにすることが「悩みを解決すること」
ゼロにするために具体的にすることが「解決法」

今回は極めてシンプルな例を扱いましたが、この話の中に悩みを解決するためのポイントが2つありました。

まずは定義するという行為です。

定義は極めて数学的な行為です。

たとえば三角形の性質について分析したければ、まずは三角形がどんな図形なのかを定義しないことには分析できません。数学的な思考をするにあたり最初にやらなければいけない必須の行為と言えます。繰り返しですが、定義できていないものは解決できないのです。

もう1つは、引き算で数式表現する行為です。

数学は関係の科学とも言われますが、複数の要素を四則演算で関連づけてモデルにする行為はまさに数学的な行為です。

自分で悩みを解決できる人は数学的な思考ができる

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私はいつも「悩みとは引き算である」という表現を使っています。この記事をお読みくださった方であれば、その意味がきっと伝わっていると思います。

自分で悩みを解決できる人は、思考がとても数学的です。そういえば、私たちはかつて数学の授業で問題を解くという行為をたくさん訓練してきたように思います。その行為を日常生活やビジネスという文脈に置き換えれば、問題解決(悩みの解決)となるのは明らかでしょう。

今回ご紹介したエッセンスは、数学的思考と問題解決の関係を表すほんの一例に過ぎません。自分の悩みを自分で解決できる人になるために、今からでも正しい数学的思考のトレーニングをしてみてはいかがでしょうか。