私たちはYouTube作家として、YouTuberの動画に関わるだけでなく、企業がもつYouTubeチャンネルの運営支援も行ってきました。問い合わせ元の多くは、すでにYouTubeをやっている企業、これからYouTubeを使って何かを伸ばしていきたいと考えている企業。タレントを抱えている事務所さんもあります。
すでにYouTubeをされている企業からご相談をいただく場合、まずは現状の運用状況をお伺いするのですが、私たちの観点で言えば「これはYouTubeをやっているとは言えない」状態のものが多くあります。
担当者の方が各部署にいるチャンネルが一般的なのでしょうか。一概には言えませんが、さまざまなジャンルの動画が無造作に上がっています。1つの企業の名を冠したアカウントで多様な訴求をしたいのか、ジャンルや担当部署の異なる動画をとりあえずYouTubeに置いている状態が多いのです。
とくに、その企業が何かで作ったであろう映像、例えばテレビCMの置き場になっているパターンが散見されます。
テレビCMは放送枠を確保して映像を出せば人に見てもらえます。一方で、YouTubeは誰にも見られないところからのスタートです。見てもらうための工夫がいっさいないチャンネルは、見向きもされません。
「せっかく出すなら宣伝になるようなもの」を、とCM動画掲載を頑張ってしまう。これでは、運用方法をYouTubeに寄せても、見てはもらえません。
さらに、Z世代と呼ばれる26歳以下の方々は、企業名よりもフォロワーが何人いるのかを重視しており、それがダイレクトに知名度につながります。YouTubeのチャンネル登録者数や視聴回数が伸びていないと、企業自体へのマイナスブランディングにもなりうるのです。
では、どのような状態がマイナスブランディングにつながるのでしょうか。
例えば、ある通信大手企業のオフィシャルチャンネルは、大変良くない状況といえます。日本向けと外国向けのコンテンツが混ざってチャンネルに投稿されています。さらにそれぞれのコンテンツがとっ散らかりすぎていて、統一感がまったくありません。
また、ある日本企業が運営する著名なYouTubeを見ると、運用としてはうまくいっているとは言いがたいものになっています。人気のあるコンテンツに見えても、YouTube上のCMとして流しているからこその再生数です。資金力のみで再生回数を稼いでいるだけで、自然に視聴者数が伸びているわけではありません。チャンネル全体を見ても、どういうコンテンツが上がっているのかが伝わらない構造になっています。
テレビCMのヒットからチャンネル登録者が増えると、ほかの部署の担当者の欲が出てきてしまう。数字を取りたいからなんでもよいのでコンテンツを投下しようという意図でさまざまな動画を上げてしまうと、動画の再生数が1000に届かないことも多くあります。こちらは、失敗例としてありがちなパターンだと言えるでしょう。
企業だけでなく自治体や行政組織のYouTube活用も進んでいます。