部下がついてくる上司と離れる人の「叱り方」の差

英語では、“A stitch in time saves nine.”(時宜を得た一針が九針を省く)となるこのことわざは「小さなことでもすぐ対処しないと、あとで面倒なことになる」という意味。言葉で万人が正しいと思える真実が伝わるこのようなことわざの力を借りれば、くどくど説教しなくても、相手の心に必要なメッセージが響きやすくなるでしょう。

場面4 「なるほど」を連発する部下に注意するとき
×君のボキャブラリーには「なるほど」しかないの?ちゃんと聞いているのか疑われるよ。やめたまえ
〇コミュニケーション相手に反感を与えてしまっては損だから、「なるほど」の連発はやめようね

×言葉遣いから人格否定はしない

これは、「なるほど」を繰り返す部下から受ける話し手の主観的な印象を理由に、相手を強く非難する言い方です。人格否定にもつながり、ルール②に反します。このような極端に一方通行の伝え方は「たまたまこの言葉が出ただけでボキャブラリーはほかにもあります!」「ちゃんと聞いています!」などと相手の反発心を無駄に刺激するだけで、よい結果にはつながりません。

やんわりと指摘する方法も

〇受け手のことを考えるよう促しつつ、指示をする

相手の反発を生みにくいのは、直接的な非難を避けて、「いつもなるほどで済ませている」事実だけを指摘する言い方です。「コミュニケーションで損するかもしれない」というのは話し手の考えですが、それを知ってどうするかは、聞き手に委ねるかたちをとっているので、相手も納得しやすいでしょう。

こんな言い方も→ 「なるほど」が無意識にポロポロッと口から出てきているみたいだよ。

相手が自分の口癖に無自覚な様子なら、それに気づかせることを目的として、ちょっとユーモアを含んだ言い方をするといいでしょう。これまで気づいていなかった相手にとっては驚きの事実でしょうが、やんわりと指摘されれば目が覚めるはずです。

場面5 返事はいいけれど結果が伴わない部下に声をかけるとき
×返事だけはいいけど、君はできたためしがないよね。実は陰で手を抜いているんじゃないの?
〇いい返事をしてくれてほっとするよ。明日までに何パーセントくらいできそうかな

×決めつけは意欲を削ぐので避ける

ズバリ図星である可能性が高いとしても、こんなふうに決めつけられてしまうと、ヘソを曲げてしまいます。「できたためしがない」という強烈な否定の言葉を使うのも危険。このような否定は人格否定にもつながりルール②に違反します。また、手を抜いているわけではないただの力不足の相手は、立ち直れないほど落ち込んでしまいます。

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〇相手をリスペクトし、具体的なゴールを提示

返事どおりにやってくれることを前提に話すこのような言い方なら、相手を否定せずに済みます。ただし、確実に仕事に着手してもらいたいのなら、具体的なゴールを決めてしまうこと。その際、こちらが勝手に決めるより、この例のように自分自身で設定するように仕向けるのがうまいやり方。自分で決めたことなら、自分ごととして責任感を持ちやすく、手を抜きづらくなります。

こんな言い方も→ いい結果を出すには、陰の努力も必要だと思うけど、君ならきっと大丈夫だと思っていますよ。

相手への信頼を前面に出すのもよいでしょう。信用されると、嫌でも頑張らざるをえなくなるのが人情です。