遅刻を繰り返すのは、時間を守ることへのモチベーションが低い証拠です。それはもう癖のようなものなので、遅刻自体を否定するだけではあまり効果はありません。そういう人には、この言い方のように、「遅刻による悪影響」を示しましょう。「分担が決められなくて困っている」と具体的に真実を伝えれば、嫌味っぽくもなりません。
本人の意思に任せるだけでは改善が見込めそうにない場合は、「遅刻の原因になっていることはなんだろうね。一度紙に書き出してみてくれる?」というふうに、もう一歩踏み込むといいでしょう。
『シンギュラリティは近い』(NHK出版、2016)の著者であるレイ・カーツワイルも、問題点を書き出したところですでに解決に向かっているという提言をしていますので、行動を変えさせるやり方の一つとしてもおすすめです。
×気持ちに任せて叱っては逆効果
この言い方は、話し手の胸のうちをそのまま口にしているだけです。叱るというより、怒りに任せて暴言を吐いているに等しいので、言われたほうはうろたえるだけです。叱りと怒りを区別できていないのでルール①に反しています。
家に帰って着替えることなど現実的に無理であることをわかったうえで言っているとしたらさらに悪質です。ヒステリックな態度で激昂したところで、相手の反省を促すことはできません。
〇相手の意見を聞きながら諭す
事実をただ叱るのではなく、「どう思う?」という言い方で、TPO を無視するとはどういうことであるかを自ら考えるよう導くのはうまいやり方。ガツンと叱られて反省することももちろんありますが、自ら考えてこそ、本当の反省なのです。
こんな言い方も→ 田中くん、見栄えも評価のうちですよ。そう思わない?
さらりと真実を伝える言い方もよいです。パフォーマンス心理学では外見も重視されていて、洋服など身につけているものすべてをその人のルックスだと捉えています。
×事実の確認だけでは表面的な反省で終わる
「苦情を報告しなかった」こと自体をただ責めてしまうと、「上司に怒られないために報告する」という発想になってしまい、表面的な反省で終わってしまいます。
隠そうという意図があったわけではなく、単に忘れていただけだった場合、「なんでそこまで責められなければならないのか」と反発しか感じないでしょう。また、単にミスを指摘するだけでは行動は変わりません。ルール⑤「救済措置をつくる」にのっとって、対策を考えてあげましょう。
〇ルールの目的を明確に伝え、行動を促す
人の行動を促すのは表面的なルールではありません。『WHY から始めよ!』(日本経済新聞出版社、2012)などで有名なアメリカのコンサルタントであるサイモン・シネックは、人は「なんのために」というWHY を理解してこそ、行動を起こせると言っています。
「クライアントとの信頼を築いていくため」というWHYを盛り込めば、たった10秒で相手は「苦情の報告の必要性」が腹落ちします。それさえ理解させれば行動を変えることは難しくないのです。
真面目なタイプの部下に注意するのなら、「今日の一針、明日の十針」ということわざを知ってる?」などとことわざを一つ示して、たった1回の報告漏れの意味に自分で気づかせるよう仕向けるのもいいやり方です。