方法の例の3つ目は、「携帯電話の一生の流れをイメージしてみる」という方法です。これは、先ほどの「最低限、実施すべき検討」で述べた、「工場・倉庫」⇒「販売店」⇒「毎日利用中」⇒「家で保管中 or 下取り・リサイクル」が該当します。
余談ですが、上記で例示した3種類の方法の例は、以下のような、さまざまな活用方法が想定されます(どんな活用方法でも問題ありません)。
さて、上記で解説した検討方法を、よく見てください。
いずれも、「論理思考のツール(例:フレームワーク、ツリー構造による構造化)」を活用しているわけではありません。むしろ、「自分が知っている知識・経験を思い返してみる」という形で、「想像力(具体的なイメージ)」を中心とした検討を実施しています。
このように、「論理的な解」へ到達するまでの途中の検討プロセスでは、あくまで「想像力」が重要になってきます。
一方、「論理力」をまったく使っていないわけではありません。
たとえば、「携帯電話の一生をイメージしてみる(方法:例3)」といった形で、「どのように・何に対して、想像力を発揮するのか」を、「論理力が補佐・整理」していると解釈できます。
ただし、「論理力による補佐」を実施するとき、「論理思考ツール(例:フレームワーク、ツリー構造による構造化)」を活用しているわけではない点に、改めて注意してください。あくまで、論理思考ツールのような「汎用的・一般化された手法を適用する」ことではなく、「個別の問いに合わせた形で論理力を発揮する」ことが重要になっていました。
さて、上記のケース問題への解説内容を踏まえながら、ここからは、本題の「なぜ自力で論理思考を実践できないのか」について解説していきます。
まず、論理思考の勉強をした経験がある方が陥りがちなミスは、「論理思考のツール(だけ)に頼って解こうとする」というミスです。
たしかに、論理思考の解説をしているコンテンツには、フレームワークやツリー構造のような「論理思考ツール」の解説をしているものが少なくありません。その結果、「論理的に考えよう」と言われると、ついつい「論理思考ツールを基準として検討を進めよう」としてしまう人が少なくありません。
しかし、これらの論理思考ツールを利用しても、「毎日利用中の携帯電話以外にも、”家の棚の奥”や”メーカーの倉庫”にも、携帯電話が存在する」といった「思考を広げる(大枠の見落としを防ぐ)」方向へ、意識が向くことは稀です。
なぜなら、これらのツールは、「すでに気がついている内容を、わかりやすくまとめる」という機能がメインであり、「見落としに気がつく」ことに関する機能については、せいぜい「”細かい”見落としに気がつく」というレベルが限界だからです。
そのため、あくまで「想像力」を起点とする必要があります。
しかし、想像力“だけ”に頼ればよいわけではありません。
そもそも、今回の「携帯電話の存在台数」の問いにおいても、大半の方は、(程度の差はあると思いますが)想像力も発揮していたはずです。加えて、「最低限、実施すべき検討」で示した「携帯電話の存在場所」についても、まったく知らない知識ではなかったはずです。