そんな直感に従ってその小道を進むと、階段があり、下った先には大きな洞窟がありました。洞窟の奥には海に通じる小さな出口があり、そこから差し込んだ光が、洞窟内を美しく照らしていました。出口から海に出て、S字型に入り組んだ海岸線を辿っていくと、見たことのないような貝殻やサンゴが打ち上げられている、それは美しい海岸に行き着いたのです。
目的地を定めて歩いていたら、その小道には気づかなかったでしょう。思わぬ選択肢が現れたとき、自分の感覚を信じて歩いていくと、ときに予想もしなかった光景に出逢うことができます。
自分の住む街はすでに知り尽くしていると思っているかもしれませんが、一度、目的もなしに直感で決めた道を歩いてみましょう。完璧な夕焼けや美しい小石、素敵な人の生活、そして人との偶然の出会いや発見があるかもしれません。
そんな決断や出会いがあなたの感性を高めてくれるでしょう。せわしない現代人にとって、非日常で贅沢なことでもあります。
■「コンプレックス」を克服してみる
自分軸に基づいた決定をしようとするも、無意識のうちに選択肢を狭めてしまう要因があります。それは、コンプレックスです。
誰しも、上手にできないことや、以前にチャレンジして失敗したことなど、今もなお、小さく避けていることがあるのではないでしょうか? そういったコンプレックスによって選択肢を狭めてしまうと、自分の感性に基づいた決定はできません。
そこで、広い選択肢のなかから選び取るためにも、自分の可能性を狭めているかもしれないコンプレックスを克服してみましょう。
私は「魚をさばけない」ということがコンプレックスのひとつでした。ですが、コロナ禍の自粛生活を機に練習し、ここ1年でできるようになりました。魚のさばき方を知ると、魚を1匹単位で買うという選択肢が手に入り、世界の見え方が急に変わりました。
魚を1匹で購入できると、身はお造りやフライ、かぶととアラは煮付けなど、いくつもの選択肢のなかから料理を決められるようになります。自然にレパートリーも増えていきました。
また、「長距離走がとても苦手」というコンプレックスもありましたが、2012年の京都マラソンでフルマラソンを完走したことで、克服しました。すると、また日常が変わりました。「仕事や家庭で悩んだとき、とにかく無心で走り続けてみる」という選択肢が手に入ったのです。
コンプレックスを克服したことで、選択できる世界が一気に広がりました。以前の私なら、「魚料理はスーパーのお惣菜から選ぶだけ」「悩んだときはお酒や娯楽に頼るだけ」など、狭い選択肢のなかでしか「決定」ができない自分のままでした。
当たり前ですが、決定は選択肢があるからできることです。苦手な選択肢から目を背けて、これまで通りや、他人の言う通りにしていては、それは「決定」とはいえず、決断力は高まりません。
コンプレックスを克服することで、選択肢が増えます。いくつもの選択肢のなかから選ぶ意識を持つことで、判断軸としての感性もより強固になっていくのです。このタイミングで、何かにチャレンジしてみてはいかがでしょうか。
■「社会参加」の意識を持ってみる
「アンガージュマン」という言葉があります。20世紀フランスを代表する哲学者、ジャン=ポール・サルトルが唱えた言葉で、「参加」や「拘束」を意味するフランス語です。日本語では「社会参加」などと訳されますが、要するに「責任をもち、主体的に選択や行動をして生きる」ということです。
「責任をもつ」とは、社会に対して責任をもつという意味です。買い物からSNSでの発言にいたるまで、日常のあらゆる行動において、その選択や決断のすべてが社会に影響を及ぼす(かもしれない)という責任を感じて行動するのです。