最大酸素摂取量は、運動中に体内に取り込むことができる酸素の最大量で、全身持久力の指標になる。動いているうちに酸素をたくさん取り込むことができれば、細胞内のミトコンドリアでたくさんのエネルギーを作ることができる。
イギリスの研究で40~69歳(平均58.1歳)の被験者に自転車をこいでもらい、その運動レベルによって経過観察を行ったところ、運動可能レベルが低くなるにつれて生存率が低下した。
最大酸素摂取量の年齢による低下もまた生存率に関連がある。フィンランドの研究で42~60歳の男性の値を測定し、11年後の値と比較した。その結果、最大酸素摂取量の値が大きく下がった人は死亡リスクが高く、逆に改善している人は死亡リスクが低下していた。
運動に取り組むと、最大酸素摂取量の低下を食い止めることができる。運動に取り組まずに値が低下していくと、年を追うごとに死亡リスクは上がっていくが、逆に積極的に運動に取り組むと死亡リスクは低下し最小限に食い止めることができる。
イスに座って生活する時間が長いと最大酸素摂取量は当然かなり低い値になる。座りがちな人の50歳時の値が、積極的な運動をしている人の80歳時の値に相当する。つまり30年分の健康被害があるといえるのだ。
これを防ぐためには、連続して15分以上座ることがないように、適宜立ち上がって簡単な下肢運動(屈伸や背伸びなど)を欠かさないようにしなくてはならない。
筋肉の量は30歳を超える頃から年間約250gずつ失われていく。しかしその重量に相当する脂肪(500g程度)が増加するため一見体重の増減がない。若い頃から体重が変わらないので安心と思っていても、その質は大いに変わっているということだ。
そして50~75歳に約25%の筋力が失われる。歩行困難や立位困難など日常生活に支障が出るほどの筋肉が萎縮する状態を「サルコペニア」と呼ぶが、「サルコペニア」になると、死亡や介護を必要とするリスクが2倍に上昇する。60歳で維持している筋肉の量が、その人の寿命の長さに一致する。
年齢に関係なく筋トレによって筋力を強化することは可能だ。40代であっても、50代であっても、60代になるまで待つことなく筋力トレーニングを開始すれば、将来のサルコペニアの心配はなくなる。
「最大酸素摂取量」を改善するためには、心肺機能を高めるランニングのような「持久的トレーニング」をイメージする人が多いだろう。週3回、60分程度の持久力トレーニングであれば、健康上のメリットが得られる。しかしそれ以上の持久力トレーニングは体にとってはストレスになる。
長時間の持久力トレーニングによって酸化ストレスが増加するため、運動時間はなるべく短く行う必要がある。短時間の運動で最大酸素摂取量を向上させるために取り組むべき方法は、高強度インターバルトレーニング(HIIT)と筋力トレーニングだ。
高強度インターバルトレーニングは15~30秒の全力のトレーニングを行い、その後15~30秒程の休憩を1セットとして、このセットを数分繰り返すトレーニング法。高強度インターバルトレーニングも、ランニング、エアロバイクなどの持久力トレーニングと同じく最大酸素摂取量は向上する。
運動時間はたかが30秒と思うかもしれない。しかし実際行ってみると、単一の運動を30秒も続けることは難しく、普段運動をしていない人にはハードルが高すぎる。そのため最初はTABATA式と呼ばれる20秒運動、10秒休憩を、はじめは4セット(2分)、最終的には8セット(4分)のトレーニングができるように徐々に負荷を上げていく。