Z世代が「支持する企業」「しない企業」決定的な差

──やってるふりは通用しない?

例えばSDGs。広告代理店から「うちにいいソリューションあります」と提案され、研究開発や事業改革、アップサイクルのエコシステムなどの議論より先に、プロモーション予算で広告キャンペーンを打ってないか。だとしたら、薄っぺらいと思われるだけ。

実際、消費者からそっぽを向かれた例は海外でたくさんあります。アメリカの黒人女性歌手リアーナが自分の肌色に合う化粧品ブランドを立ち上げ、多くの女性たちから熱烈に支持された。それを見た大手メーカーが即刻まねして色数を増やしたけど、鳴かず飛ばすだった。

成功例をパクっただけ、本気で問題を考えてないよね、と見破られた。SNSで経営者の考えが見えてしまう時代なんです。言うこととやることが一致しているかちゃんと見られている。消費アクティビストたちがその矛盾を告発し運動が起きるので、今とてもセンシティブな問題になっています

──自分たちがどんなブランドか、ストーリーを語ることも重要だと。

中でも大切なのは未来を語ること。日本企業は過去と現在は上手だけど、未来語りが苦手です。テレビCMで自動車会社トップが熱く語るのはいい取り組みではあるけど、生活者に何が約束されるのかはいま一つ伝わらない。

例えばアメリカのテスラ社は、環境負荷を低減することに加え、将来的に自動運転技術が実装されたEVを持てば、使わないときはロボットタクシーとして貸し出して収入が得られるとか、期待できる青写真を提示してくる。そういう物語って、自分にどう関わってくるかイメージできたときに感動があるけど、日本企業の場合、壮大な風景でも画素数が少なくて、何が描かれているのかよくわからない。

日本でZ世代ブランド目立てないワケ

──本書の大きな魅力はZ世代から支持されるブランド事例の数々ですが、ほぼ欧米の話ですね。

本では少し触れただけですが、2017年にアメリカ・ロサンゼルスの若者数人が立ち上げた「マッドハッピー」というアパレルブランドがあります。メンタルヘルスがテーマなのですが、そこにフランスのLVMHグループが出資、一気に拡大した。小さな芽にメジャー資本がお金を投入し大きくすることで、若者発信のオルタナティブなカルチャーが育まれ根付いていく現象が、アメリカではダイナミックに起こっています。

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日本にもZ世代が支持する小さなブランドは多数あるんです。ただシニアがピックアップできず、マスコミもリーチできてないので無名なだけで。例えば「NEUT」というメディア。ダイバーシティーや在日外国人との共生、セルフケアやセクシュアルウェルネスの話などをしっかり取り上げている。

けど大手メディアは自らの大看板を死守することに躍起で、ヒップホップで言う、次の世代を“フックアップ”することなどには気が回らない。ヒップホップでは、売れてるおじさんラッパーが有望な若手を発掘し、コラボすることでさらに評価が高まる。若い子は一躍名が売れるし、互いにメリット大。日本はまだ、みんなで一緒に坂道下っていこう、みたいな空気だけど、アメリカでは新しい芽が次々育ちつつあることを伝えたかった。