わたしたちは、自分に似た人を好ましく感じる。「気が合う」と思う相手、つまり考え方や価値観が似た相手に好意を持つ。同じ態度を持つ人がいるということによって、自分の態度の正しさを確認できるからだろう。
相手が似ていれば似ているほど好意も大きくなる。このことについて検討した研究(Byrne & Nelson, 1965)を紹介しよう。
研究では、参加者にさまざまな問題に対する態度を答えてもらった。その際の質問数は、参加者によって異なっていた(4問から48問の範囲)。
次に、別の人(ターゲット)の回答を参加者に示した。ただし、その内容は参加者の回答に似せて作成されたものであり、類似度の割合は100%、67%、50%、33%のいずれかだった。回答を示したあと、参加者にはターゲットの知性や魅力などについて評定してもらった。
結果を分析したところ、問題数にかかわらず、回答が類似している割合が大きいほどターゲットの魅力が高く評定されていた。態度の類似度が高いと好意も高いということである。
この研究は、架空のターゲットに対して評定をしてもらったものである。そのため、ターゲットとの「類似度の知覚」と「好意」の関係を示したものといえるが、「相互作用の相手に対する評定」を検討した研究でも、「類似度」と「好意」の関係が認められている。
メタ分析を行った研究(Montoya et al., 2008)では、パーソナリティや態度における類似度と、相手に対する魅力の評定には強い関連があった。
さて、ここまで「類似性の影響」について見てきたが、もしかすると、「自分とは反対の性格の人と仲がよい」という方もいるかもしれない。自分にないものを持っている人に対しても、わたしたちは魅力を感じる場合がある。「相補性」による好意である。
こうした傾向については配偶者の選択という文脈で検討されることがある(Winch et al.,1954)。研究の対象者は結婚して2年以内、子どもがいないカップルであった。配偶者に望むパーソナリティをたずねたところ、自分のパーソナリティとは反対のものであることがわかった。
「相補性による好意」は、お互いの役割分担が必要な状況や、目標が設定されている状況において生じやすい。問題解決のためのコミュニケーションの場面を扱った研究(Dryer & Horowitz, 1997)を紹介しよう。
研究の参加者は女性であった。参加者には、別の女性(実際は実験の協力者)と対人関係に関する問題について話し合うよう依頼した。話し合う際には、実験の協力者は主導的もしくは従順的いずれかのコミュニケーションスタイルを演じた。なお、あらかじめ参加者のスタイルも測定されていた。
「コミュニケーションに対する参加者の満足度」を検討したところ、参加者自身のスタイルとは反対のスタイルで相手から応答された場合に満足感が高かった。相互作用が必要な状況では、こうした「相補性の効果」が見られるようである。ただし、この研究の参加者はその点を自覚してはいなかったようだ。