そもそも投資信託は多くの人が共同でお金を出し、ひとつのまとまった塊にして分散投資をおこなう仕組みのものですから、直接株式に投資する場合に比べればリスクは小さいと言ってもいいでしょう。言うまでもなくリスクが小さいということは結果のブレ幅が小さいということですから、大きく上昇して高いリターンを得ることも難しいのは当然です。
したがって、本当に大きな資産を作ろうということであれば、毎月少額のお金をコツコツと投資信託で積み立てをするだけではまず実現することはできないでしょう。大切なことは支出を適正化しながら、投資に回すお金を増やしていき、可能な限り投下元本を増やして積み立てをするということです。
言うまでもありませんが、定年退職者のように「自分のお金の購買力を維持する」ことを投資の主目的にするのであれば、投資元本をやたら増やす必要はありません。自分がリスク許容できる範囲内で積み立てていけばいいでしょう。
私も投資信託の積み立てをしていますが、年齢は69歳なので、それほど多くの金額は投入していません。でも投資信託を継続的に購入していくことで億り人になりたいのであれば、まず知っておくべきことは「支出を管理して毎月の投資可能資金を増やすこと」です。
また、投資信託で大きな資産を作って億り人になろうということであれば、基本は積み立て投資であったとしても、どこかの時点では、やはりリスクを取る覚悟が求められます。私が今までに取材した人たちの中で、投資信託によって大きく資産を増やした人は多かれ少なかれどこかの時点で覚悟してリスクを取っています。
具体的に言えば、少しずつ積み立て投資をしていたとしてもリーマンショックのような大幅な下落が起きたときには普段の積立金額よりもかなり多くの金額を投資することです。もちろんそのためには資金が必要です。積み立て投資の場合は毎月一定金額が銀行口座から自動的に引き落とされて購入します(場合によっては給与天引きという場合もあるでしょう)。
ところが少しまとまったお金ということになると給料からでは無理ですから、それまで預金などの形で蓄えていたお金を投資に振り向ける必要が出てきます。これはとても勇気のいることです。そうでなくても市場が大きく下落しているときは不安な気持ちにさいなまれます。売らずにじっと辛抱するだけでもかなりの忍耐力が必要でしょう。
ましてやそこで新たにまとまった資金で投資するというのは相当な勇気が必要です。でもそれをしなければ資産を大きく増やすことはできません。いつの時代でも大きな資産をこしらえた人というのはそれが投資であっても商売であってもどこかの時点で何らかの大きな勝負を何度か経験してきています。リスクを覚悟しない限り高いリターンは得られないというのは永遠の真実だからです。
大事なことの2番目は「あなたはリスクを取れる勇気がありますか」ということなのです。
投資信託を使って長期に資産形成する場合、大切なことの3つめは市場から出たり入ったりせず、「市場に居続けること」です。出たり入ったりするというのはどういうことかというと、売買を繰り返すことを言います。これに対して「市場に居続ける」というのは買った投資信託を売らずに持ち続けることです。
ところがこれができずに売買する人は結構多いのです。よく、「じっと持っているだけじゃあ能がない。高いときに一旦売っておいて安くなったらまた買えばいいじゃないか」と言う人がいますが、実際にはそんなにうまくいくわけはありません。
高いときは「もっと上がるんじゃないか」と思って売りそびれるのはよくあることですし、逆に下がると「まだ、もっと安い値段で買えるんじゃないか」といった気持ちになりがちですから、そんな絵に描いたようにうまく売買などできるはずがないのです。たまたまできたことがあったとしてもいつも100%成功することはまずありえません。