「攻めの経営」ばかり説く社長が会社を潰す必然

経営者やビジネスマンが持つべき「守りの視点」とは? (写真:CORA/PIXTA)
経営にも、「攻めの経営」と「守りの経営」があります。
攻めは一点突破でも可能ですが、守りは全方位的であり、全体を把握できていないとできません。ですから、経営を知っていないとできないのです。
しかしその「守りの重要性」に気づく前に、傾く会社が後を絶ちません。
数千の会社を見てきた実業家でありコンサルタントである浜口隆則さんに、経営者やビジネスマンが持つべき「守りの視点」を聞きました。
※本稿は『生き残る会社をつくる 「守り」の経営』より一部抜粋・再構成してお届けします。

「PL思考」から「BS思考へ」

「PL思考」というのは、会社を経営するときにPLを重視することです。PLはProfit and Lossの略で損益計算書に表されます。BS思考は、BSを重視することです。BSはBalance Sheetの略で貸借対照表に表されます。

多くの経営者はPL思考が中心なので、あまりBSを気にしていません。PLも重要ですが、会社の守備力を上げていくためには、BSを重視するほうにシフトしていかないといけません。BSを意識することが守りを強化していきます。

PLは、たまたま偶然、いい年があったりします。しかし、BSはごまかしようがなく、偶然でいい状態にすることは不可能です。「PLに偶然は、ある」けれども「BSに偶然は、ない」のです。

ですから、BSをいい状態に持っていける経営者が本当に優秀な経営者です。一時的な成功者はPLしか見ていませんが、成功し続ける経営者はBS思考です。

まずは、BSのことを正しく知るところから始めましょう。PLとBSでは、下の図のような違いがあります。

出典:『生き残る会社をつくる 「守り」の経営』より

BSは「資産の目録」とも言えます。自社がどんな資産を持っていて、その資産の元になった資金の出所が明確にされています。

下の図のように、左側に資産、右側に資産の元になった資金の調達方法(原資)が表されていて、左側の資産と右側の調達元の合計が同じになるようになっています。左と右の合計が同じになってバランスが取れるようになるのでバランスシート(BS)と呼ばれます。

出典:『生き残る会社をつくる 「守り」の経営』より

BSで最初に着目すべき4つの領域

PLとのつながりは、次の図のようにPLで最終的に会社に残った税引き後の最終利益が利益剰余金として④の直接資本の中に入ってきます。

出典:『生き残る会社をつくる 「守り」の経営』より

BSで最初に着目すべきなのはこの図の4つの領域です。

① 流動資産
② 固定資産
③ 他人資本(負債)
④ 直接資本(純資産)

これらの4つの領域で自社のBSの優劣がわかります。会社としての「地力」がわかるとも言っていいでしょう。

BSのいい例は次の図です。変化の激しい時代は、このように「流動資産が多くて、直接資本が多い」状態が大事です。

出典:『生き残る会社をつくる 「守り」の経営』より

資産が多くあっても、土地建物などの固定資産が多ければ、それらはすぐに現金化できません。変化の激しい時代は即時対応が求められますから、素早く現金に交換できて必要な資産を買えないといけません。

守りを固めるためには流動性も重要です。昨日の成功の方程式が、今日、通用しなくなったりするからです。そんなときは、素早く新しく必要になった設備などを購入して、新しい方法に挑戦していかないといけません。ですから、売りにくいものを資産として持っていても防衛資産にはならないのです。

また借金よりは、自前のお金で資産を用意できたほうがいいので、この図のように③負債よりも④純資産が多くなっている状態がいいです。