従来の仮想通貨ブームと「NFT」の決定的な違い

NFTがデジタルデータに希少価値を持たせられる理由

アナログの世界では、限定生産のブランド品、宛名とサイン入りのグッズ、オーダーメイドの衣装などのように、非代替性を生かした商品が多数取り扱われています。

こういったアナログな購入体験をデジタルの世界にももたらすものが、NFTといえるでしょう。NFTを活用することで、本来いくらでもコピーできるデジタルデータに替えの効かない固有の識別情報を持たせ、希少性や唯一性を与えることが可能です。

流通・在庫コストも低く、さらに国内外を問わずグローバルに流通し、誰もが平等に購入できるデジタルデータとしてのメリットも備えています。

まさにアナログとデジタルのいいとこどりを実現する技術なのです。

さらにNFTを活用すると売買に関わる複雑な処理をあらかじめプログラムしておくことが可能です。例えば、中古本が売買された場合に、二次流通では出版元や作者への還元するのは困難です。

しかし、NFTの場合は「制作元へ販売額の10%の利益を自動支払する」という条件を設定しその通り実行できます。これは従来のバリューチェーンに対して大きなインパクトがあります。これもNFT活用の魅力といえるでしょう。

まるで「ビックリマンシール」のデジタル版

以下では、そんなアナログとデジタルのいいとこ取りを実現するNFTのユースケースを見ていきましょう。

現在、NFTの中心的ジャンルは「コレクティブアイテム」です。これは言わば「プロ野球カード」や「ビックリマンシール」のデジタル版のような商品です。NFTブームの牽引役となった「NBA Top Shot」もこの最たる事例です。

NBA Top Shotは、アメリカのプロバスケットリーグのスーパープレイシーンをショートムービー単位でNFT化したもので、従来のカード紙面では実現できない迫力ある表現となっています。また、ローンチ時からグローバル展開を実現し、何十万人のバスケットボールファンがサービスを利用しています。

これをゲーム的に発展させたものが「Sorare」という事例です。Sorareは「パワプロ」や「サカつく」といったゲームと同様に実在選手のIPを利用するスポーツゲームです。最近では、ソフトバンクがリード投資家となり約745億円の資金調達を達成したことでも話題になりました。

スペインのリーガ・エスパニョーラやドイツのブンデスリーガなど、世界140以上のサッカークラブとライセンス提携を行い、実在の選手データをNFT化して試合結果をシミュレーションし勝敗を争うことができます。

ゲーム業界のユースケースで興味深いのは「どうぶつの森」や「マインクラフト」のような箱庭(メタバース)で遊ぶサービスです。直近では「The Sandbox」というNFTゲームプラットフォームが約100億円の資金調達を実現しています。

メタバースゲームではプレイヤーが所有する「土地」や「惑星」がNFTとして販売されます。The Sandboxの場合、プレイヤーは土地の中で3D CADのようなエディタを利用し、さまざまなアイテムや建物、モンスターなどをクラフトでき、これらをNFTとして他のプレイヤーに販売することも可能です。

日本では豊富なコンテンツを保有するIPホルダーが続々とNFTへの参入を表明しています。ゲーム事業者のカプコンやスクウェア・エニックス、セガ、バンダイナムコらが自社IPを利用したNFTの販売を発表しました。

出版業界では、メディアドゥとトーハンが雑誌や書籍とセットで提供する付録としてアイドルの写真などをNFT化し、リアルな書籍のマーケティングにデジタルなNFTを組み合わせています。