会議は大なわとびによく似ています。両端に縄を持って回す人がいて、その中に、次々にいろいろな人たちが入ってくる。いわばファシリテーターは縄の回し手であり、参加者のみなさんは飛ぶ人です。
大なわとびは、参加者それぞれの個性が表れやすいものです。いちばんにさっと飛び込んできて、そのままずっと中で飛び続ける人もいれば、なかなかタイミングを読むことができず、まごまごしてしまう人もいます。あるいは、積極果敢に飛び込んではくるものの、すぐに縄を足に引っかけてしまい、流れを断ち切ってしまう人もいるでしょう。
では、ファシリテーターである回し手は、そこでどのようなことに気をつけるべきでしょうか? 大なわとびの理想は、参加者たちが輪の中に入ったり出たりしながら、心地よく長く飛び続けられること。もし、なかなか中に入れず戸惑っている人がいたら、「少しゆっくり回しますね」と声をかけ、背中をそっと押して入りやすくしてあげる配慮が必要でしょう。
会議にもこれと同じ構図があります。一部の積極的な人ばかりに発言の機会が偏りすぎたり、最後までほとんど意見を言えずに終わる参加者がいるような状況は、できるだけ避けるべきです。
私はこれまで、数多くの会議に参加し、さまざまな記者会見を取材してきました。いま振り返ってみると、司会者がダラダラと話すのを聞かされて退屈な思いをしたり、結論が出ないどころかののしり合いになって、後味の悪い終わり方をする場面を何度も経験してきました。仕切りの悪さが組織やチームにもたらす悪影響を、さまざまな場面で目の当たりにしてきたのです。
そうした経験から、ファシリテーターの存在がいかに重要であるかに気づいていきました。今回は、これを読んでくださっている方の仕切りがうまくいくように、会議の進行で抱えやすい悩みのなかから、具体的な対応策を3つ、ご紹介します。
会議でもトーク番組でも、冒頭からいきなりフルスロットルのテンションで始まることは、まずありません。誰しも序盤はアイドリング状態であり、場の様子をうかがいながら、という雰囲気になりがちです。
そこでファシリテーターは、とにかくたくさん話をしてもらうことに注力すべきで、序盤にどこまで意見を言わせることができるかによって、その後の議論の深さが決まると言っても過言ではありません。
まず意識していただきたいのは、会議の序盤は議論の材料を集める時間にあてるべき、ということです。大切なのは、安心して話せる場であるとその場の人たちに認識してもらうことで、序盤は出された意見に対する否定的なコメントを、できる限り排除していく努力が必要です。言いたいことを自由に言ってもらい、それに対する反論が出そうであれば「ご意見がある方はのちほどお聞きしますので、まずは○○さんのご意見をうかがいましょう」と、すかさずカットインしていきましょう。
当然、ファシリテーター自身も、序盤は相手の意見を引き出すことに全力を注ぎます。「そうですか~」「どうしてそう思うのですか?」「なるほど~」と、相手の話に関心があることを態度で示し、可能な限り深いところまで相手の考えを引き出します。