「リアル出社で久々の雑談」乗り切る4つのコツ

これは相手の行動を指示する言い方なので、一見失礼に聞こえるかもしれませんが、相手としては、

  • どういう気持ちで聞けばいいか
  • 何が求められているか

がより明確になるので、手間(コスト)が省けストレスが減ります。結果、要望通りの行動をとってくれる可能性が高まります。また、話すほうとしても早々にネタバレをしてしまうので、落ち着いて話すことができます。

ちなみに、アメリカの心理学者ロックが提唱した「目標設定理論」は、曖昧な目標より明確な目標のほうが、モチベーションを高く保てることを指摘しています。これは「会話の目標を最初に示してしまう」ことの効果を裏付けています。

「クローズドクエスチョン」で質問 ~会話の序盤はシンプルな質問で緊張をほどく~

心理的距離が遠い相手、つい緊張してしまう相手と話す際には、「Yes/No」で答えられるクローズドクエスチョンが効果的です。

「クローズドクエスチョンは話がそこで終わってしまうから雑談には不向き」と思われがちですが、会話の序盤では重宝します。

  • 「御社って汐留でしたっけ?」
  • 「はい、汐留です」
  • 「最近、移転しました?」
  • 「いえ、移転はしてないですね」
  • 「大阪に支社あります?」
  • 「はい、あります」

こうすれば多少ぶつ切れでも会話は続くので、相手の緊張感・警戒心は徐々に減っていきます。相手としては、

  • がんばって話しかけてくれている
  • 敵意はなさそうだ
  • 答えやすい(負担が少ない)

といった印象を持ちます。

またこうしたシンプルな受け答えを交わすうちに、「ちゃんとした会話をしなければ」という心理的ハードルが下がっていき、結果的に相手からも「えーと、御社は新宿でしたっけ?」など質問が出てきやすくなります。

ちなみに、理化学研究所の研究(2013年)によれば、2者の間で発話のリズムが同調すると、脳波リズムも同調することがわかりました。「会話のリズムがコミュニケーションにおいて重要である」ことを裏づけています。

「How」で質問~「Why」で相手に負担を強いない~

雑談が続いて場の空気もあたたまってきたら、いろいろと質問して話を深めたくもなります。が、その際、「Why(理由)」ではなく「How(状況)」の形式で質問するのが効果的です。

そもそも会話における「質問」の目的は「相手が話しやすくなる」こと。「こちらの好奇心を満たす」ことではありません。

×「寝坊しちゃって、まいったよ」「なんで寝坊なんかしたの?」 「いや、なんでって言われても...。アラームが……」

○「寝坊しちゃって、まいったよ」「そりゃ大変だ。どれぐらい?」 「2時間! やばくない!? それでね~」

×「最近、転職を考えてて」「どうして? 何が不満なの?」「いえ、不満ということはないんですけど……」

○「実は最近、転職を考えてて」「そうなんだ。どんな業界?」「具体的なイメージはないんですけど、今の働き方が合ってないかなって」

そもそも「Why」は「聞き手が好奇心を抑えられずに尋ねる」場合がほとんど。

ですが、理由を尋ねられると相手は強制的に「醒めた」 状態に引き戻されます。「なんでだっけ?」「ちゃんとした理由を言わないと……」とプレッシャーを感じます。一方、幅広く状況を尋ねられると、答えたいことを答えられるので話が広がりやすいのです。

『超話し方図鑑 思いどおりに人を動かす! 誰からも好かれる! 』(飛鳥新社)書影をクリックするとAmazonのサイトへジャンプします

ちなみに、カルガリー大学のカールの研究によれば、質問には①情報を得るための質問と、②相手の思考や自己理解をうながすための質問があり、カウンセリングにおいては①よりも②のほうが効果的、ということがわかっています。

このように、話し方をちょっと工夫するだけで話しにくい相手、緊張してしまう相手ともスムーズにコミュニケーションをとることができます。

コロナが明けて間もない今のタイミングでは、いきなり以前のような「何でも気楽に話せる間柄」まで、関係を持っていくのは困難。

まずはじっくり焦らず、すぐにできる簡単なコツから始めて、衰えた会話力を「リハビリ」していくのがいいでしょう。