日本人が知らない「リモートワーク」不都合な真実

急速に広がったリモートワークですが、「それが向いている業種」と「そうでない業種」にくっきりと分かれます

「IT系」「金融系」などはリモートとの親和性が高い一方で、「サービス産業系」は難しく、社内でも、現場の工場は全員出社だけれど事務系はリモートというケースも多くあります。

また、「大企業ほどリモート比率は高い」など、「高収入のエリートホワイトカラーほどリモートが許される」という現実があるわけです。結果として、「リモートが許される業種に人気が集中する」「社内での不公平感が生まれる」などの問題が生まれやすくなっています。

世界のリモートワーカーを対象にしたある白書によれば、リモートの問題点として「①(会議が多く)気が抜けない(27%)」「②コミュニケーションとコラボレーション(16%)」「③孤独感(16%)」という悩みがトップ3として挙がりました。

リモートの最も大きな課題は、「時空を超えた協力・連携関係を育むコミュニケーション」。これは多くの人が実感する共通認識のようですが、ここがボトルネックになって、イノベーションを阻害することが明らかになっています。

マイクロソフトが6万1000人の社員に行った調査では、リモートにより、労働時間は増えたものの、「リアルタイムの会話が格段に減った」ことがわかりました。グループ外の人とつながる時間も平均で25%短くなり、「コラボレーションの機会が失われた」というのです。

グループ内のコミュニケーションはできても、グループや部署外のメンバーとの関係性は希薄化し、まさに、「たこつぼ状態」に置かれてしまう。だから、会社に知り合いの少ない新入社員や、新しい部署に配属されたメンバーなどが孤独感を覚えるといった事態も生まれやすくなります。

「社内のネットワークが固定化」することで、新しいアイディアが生まれない、イノベーションが起きにくいというわけです。

アメリカでも、リモートの利便性やコスト削減効果を評価して、多くのIT企業が、リモートワークを今後も継続することを表明する一方で、こうした負の側面を懸念して、オフィスに戻るように呼びかける動きもあります。

ゴールドマン・サックスなどの金融機関はオフィスへの出勤を促す方向で、ネットフリックスのCEOは「社員はオフィスに戻るべきだ」と発言しています。一方で、「永久的にリモートを認めるIT企業」なども多く、対応はバラバラ。どの企業も、「ベストな働き方」の見極めに苦慮しているようです。

「出世競争」では「出社派」が有利になる現実

これからの働き方としては、リモートだけでも出社だけでもなく、両方を組み合わせた「ハイブリッド型」が一般的になると考えられています。

そこで将来的に問題になりそうなのが、「リモート派に比べて出社派のほうが『出世』しやすくなってしまう」こと。

日ごろ接している人との距離が縮まり理解が進む「近接性バイアス」の影響で、「出社する人ほど、経営幹部や上司の目に留まり、重用されやすい」という研究結果が出ています。

出社して、目に留まりやすい人のほうが、プロジェクトへの参画に声をかけられやすいといったことも起こってくるでしょう。全員が同じ条件であれば、問題ないのですが、一部の人はフルリモートとなった場合に、このバイアスをどう克服するのかも課題になると考えらえています。

日本では、企業によってもリモート対応のスピードや充実には随分と差があり、私の周りでも、「外資系企業」「大企業」「スタートアップ」などでは、リモートの導入が進む一方で、「中小企業」などでは、まだまだのところも多い印象です。

特に、トップがリモートワークに理解がなく、出社を強制されるなど、「リモートワークへの偏見」も根強く残り、インフラ整備がまったく進まない企業も少なくありません。