F太:僕は以前コールセンターで働いていたんですけど、コールセンターには「このトークをマスターすれば契約が取りまくれる!」という鉄板トークの型(トークスクリプト)がたいてい用意されています。でも僕はそれを無視してアドリブで話してしまうタイプだったんですが、そういう人って最初は成績がいいけどすぐに成長が止まるんです。逆に、トークが苦手でも愚直にトークスクリプトを繰り返す人は、あとから劇的に伸びていました。
公認会計士の勉強をしていたときも、同時期に勉強していた発達障害の知人は合格して、僕は受からなかった。どうやって勉強したのか聞いたら、「できる人の勉強法を丸パクリした」と教えてくれました。基本や手本を徹底的に再現することは、成長の近道なんですね。
借金玉:何かをするとき、「やり方の解像度を上げる」ことも大事だと思います。僕は最近まで歯磨きがちゃんとできていなくて、歯をひとつダメにしました。歯磨きだから、エナメル質をただ磨けばいいと思っていたけど、歯と歯茎の間のゴミを取るという作業を理解しないと「できた」ことにはならない。なんでもそういうところに気づけると、とてもいいんですけどね。
小鳥遊:私は大学を1年浪人しているんですが、それも「解像度」が低かったからです。「世界史はとにかく教科書を読み込め」と言われて、本当に小説を読むように読んでしまったので、何度も読みましたが憶えられずに結局合格できませんでした。
借金玉:僕も20代の頃は、「あの資料見ておいて」と言われたら、本当に見るだけでしたね(笑)。「どう思う?」と聞かれて、「見ただけなのでわかりません」みたいな。
F太:「やり方の解像度を上げる」=「曖昧な言葉を具体的にする」ということですね。具体的にするためのコツはありますか?
借金玉:まずは、こんなこと聞いてもいいのかと気後れせずに「教えてください」と聞くこと。どうしても聞けなかったら、1割くらいできたときにボツ覚悟で「この方向性で合っていますか?」と確認すること。1割程度なら間違っていても意外と怒られません。最悪なのは、締め切り寸前になって間違っていることが発覚して、「あなたの指示が悪かった」と開き直ること。
小鳥遊:それに近い経験をしたことがあります……。自分が止めてしまっていた仕事にまわりが気づきはじめて、「あの仕事ってどうなってるんだ?」とざわつき始めて、自分のせいですとどうしても言い出せなくて結局なかったことにしてしまいました。でも、そういうのってだいたいバレる。不安要素から逃げずにきちんと向き合うことは大切ですね。
借金玉:たとえ出さなきゃいけない書類を机の中で熟成させてしまったとしても、「申し訳ありませんでした!」と全力で謝れる人は助かります。とくに若い人は、そもそもそんなに重要な仕事は任されないので、「あいつはポカをするけどすぐに全力で謝ってくる」と思ってもらえれば、ミスを隠す人よりよっぽど安心感がある。
僕はできなかったですけどね。プライドや怒られたときの心理的負荷を考えるとどうしても謝れなかった。でも、プライドがあるからこそ、謝るなら「いま」より早いタイミングはありません。35歳になってやっと素直になれましたね。
小鳥遊:私は40歳でようやく。いまはすぐに「すみませんでした」と言います。