「なんでも大ごとにしてしまう上司」に欠けた視点

「問題解決」に焦りすぎる人に欠けている視点と、「問題」の調査の基準を解説(写真:takeuchi masato/PIXTA)
たった1つのクレーム。現場が上に報告すると、「すぐに謝罪して、解決策を考えろ」と言う上司がいます。はたしてこれは正しい行動なのでしょうか?
このほど『入社1年目から差がつく問題解決練習帳』を上梓した、日本最大級のビジネススクール、グロービス経営大学院で教鞭を執る岡重文氏が、「問題解決」に焦りすぎる人に欠けた視点を解説します。

そのクレームは「問題」じゃないかもしれない

ある日、あなたのもとにクレームがメールで届きました。「たまたまではないか」と思いつつ、上司に報告したところ、すぐに謝罪のメールを出し、サービスに問題がないかを点検するようにと指示をされました。

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通常業務に加えて、何が起こっているのか調査し、解決策を検討しなければなりません。しかし、その「問題」は本当に問題なのでしょうか。もしかしたら、たまたま発生しただけかもしれません。その場合、新たに加わった業務は余計な労力になってしまいます。

どうしたらこういった状況を避けられるでしょうか。

ここでは、「問題解決」に焦りすぎる人に欠けている視点を解説します。いずれも基本的なことばかりです。読んでしまえば、当たり前のことと感じる人も少なくないでしょう。ただ基本的なことは、得てして頭ではわかっているけど、ついサボってしまいがちです。そして、いざやってみるとすぐにはできなかったりします。

最初は少し面倒かもしれませんが、慣れるとすぐにできるようになるので、次の2つの視点を意識してみてください。

欠けた視点① 「何かが起こる可能性はつねにある」と考えられていない

環境はつねに変化していますので、何かが起こる可能性はつねにあると考えておけることが重要です。何か平常時と違うことが起こるということを想定しておくことで、過剰に反応することを防ぐことができます。平常時の状況をしっかりと認識し、「いつも」と違ったことが起こらないか、その変化を敏感に捉えるよう心がけておきましょう。

欠けた視点② 予兆と発生していることを分けて考えられない

しかし、何かが起こっているかもしれないということと、それが本当に起こっているかは分けて考える必要があります。大騒ぎをしてしまう原因はここにあります。

いつもと違う情報=予兆が確認できたら、次は、それは本当に起こっていることなのかをきちんと確認しましょう。最初の1人目の情報は、考えるきっかけを与えてくれるという意味ではとても重要ですが、本当に起こっていることか、たまたま起きたことなのかを見極めなければなりません。

往々にして、1つの事象がすべてであるかのように受け止めて、過剰な対応をとるということが発生します。とくにネガティブな声の場合はその傾向が強まります。予兆は予兆として大切にするものの、騒ぎすぎないよう注意しましょう。

(出所:入社1年目から差がつく問題解決練習帳)

どう調べればいいのか

それでは、次の例題に取り組んでみてください。

あなたは、1000名の登録会員をもつ、あるWEBサイトを運営しています。今回、サイトのリニューアルを行ったところ、使い勝手が悪くなったという声が会員から上がってきました。予兆として、使い勝手が悪くなったという情報を得たことになりますので、実際に、多くの会員が同じように感じているのか情報を収集するべく、アンケートを実施したいと考えています。さて、何名からアンケートがとれるといいでしょうか。